自殺者の最後の目撃者になったことがある。
うちの目の前は踏切で、毎年飛び込み自殺が起きる残念スポットだ。
中学時代の俺は踏切向こうのコンビニにジュースを買いに行った。
踏切前にはしょぼくれた爺さんがぼうっと立っていた。
若干嫌な予感がしながらも無視してコンビニに行った
帰りも突っ立ってる。
そこで足を止めて爺さんをまじまじと見る。
くたびれたダウンジャケットにニット帽。
疲れた顔をしていた。
そこまで観察して家の門をくぐると電車の激しいブレーキ音がした。
「…あの爺さんが飛び込んだのか!?」
慌てて踵を返すと停車した列車と血飛沫。
遺体は見ていない。
駆けつけた警察官に事情を説明するも個人情報がどうので詳細はわからなかった。
それから異変は起こった。
踏切でその爺さんを見るのだ。
直視するわけじゃない。
視界の隅に立っている。
実害は無いが気味が悪い。
それが高校まで続いた。
高校に入るとSという変人に出会った。
Sは初対面の俺に向かって
「お前変なもん見えるだろ?
チャンネルが合っちゃってるんだよ。
食生活を変えるとか運動するとかして日常生活を変えればチャンネルが変わって見えなくなるぞ。」
と言ってくる変人だった。
ともあれ言われた通り朝ランニングを始めるとその爺さんは見えなくなった。
他のものは見えるようになってしまったが…
S曰く
「お前は霊感体質だな。
チャンネルが広がってやがる。
まぁほとんどは実害ないから気にしない事だな。
悪霊なんてめったにいねぇよ。」
十分迷惑してる俺を笑い者にするSは10年越しの腐れ縁になっている。