手招き

小学生の頃の話。
自分で言うのもなんだけど、結構ボンクラな性格してて
ボーっとしてるというか、すぐに自分の世界に入っちゃって
よく遠足中にはぐれたり、授業中に先生の呼ぶ声で我に帰るとか
頻繁にあったんだ。
ま、それで、小学校の1年か、2年くらいの頃なんだけど
科学博物館みたいなところに、遠足に行った時のこと。
例によって、みんなとはぐれてしまったわけだ。
夢中になって、展示物を見てたら、周りに誰もいなくなっててさ。

展示物の説明をするためのガイドさんとか、他のクラスの児童とか
そこかしこに居たはずなのに、人っ子一人居ないかのように
館内も静まり返ってる。正直、パニックになって、その場で泣いてると
少し離れた場所から、「おーい」という男の声が聞こえてきた。
担任の先生は女の人だし、声にも聞きおぼえなかったけど
純粋に人がいたことがうれしくて、そっちの方に進んでいった。

「こっちだよ、こっち」
曲がり角のところで、手だけが突き出て来てて、手招きしている。
そこめがけて、走りながら、角を曲がると
「きゃあ」と、驚いた声。
顔をあげると、担当の先生だった。どうやら、俺を探して
あちこちと動いていたらしい。

その割には、館内に人の気配がしなかったし
道案内?してくれた男が誰だったかも謎のまんま。
そもそも角を曲がったところには、先生以外誰もいなかったし。
そんな、ちょっと不思議な体験。

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