これは、幼い頃から大人になった今でも不思議な体験をし続けている話。
私は幼い頃から、気が付けば口を開けてぼーっとしているアホな子だった。
道を歩いている時も、空を見上げながらぼーっとして歩いているから、よく人とぶつかっていた。
しかしごく稀に、人にぶつかった衝撃を受けて顔を上げると誰もいない、ということがあった。
その時は「おかしいなあ?」くらいにしか思っていなかったけれど、水木しげる漫画でそういう妖怪がいると知ってからは、「そういうこともあるんだなあ」と思っていた。
そして小学校高学年になった頃のこと。
幼い頃程ぼーっとすることは減っていたけれど、やはりぼけーっとしていた私。
ある時、家族旅行でお寺か神社へ行った。
神社仏閣にさほど興味のなかった私は、両親から離れて地面をぼーっと見ながら歩いていた。
すると、ボフッと人の背中にぶつかった衝撃があった。
ごめんなさいと言おうと顔を上げると、誰もいない。
「いつものあれか・・・」と思い、一歩進むとまた衝撃が。
いつもはこういう時、何もないことを確認して進むと普通に進めたのでビックリした。
手を伸ばすと、何かがあるのは分かるけれど視認できない。
透明な壁がある感じ。
「うわ!なんじゃこりゃ!?」と思っていたところに、袈裟を着たおじさんが何か叫びながら走ってきた。
そして何かよく分からなかったけれど、私に対してもの凄く怒っていた。
「不敬な!」とか、「何をしているんだ!」とか。
私は訳が分からなくて固まっていると、両親が近寄ってきた。
両親は「状況はよく分かりませんが、うちの子が何かしたならすみません」という感じで、おじさんに謝ってしまったから、私は「何もしてないのに!」と思って腹が立ってきていた。
なので、何もない透明な壁のあったところを思いっきり蹴って逃げてやった。
蹴った感触は丸太を蹴った感じだった。
逃げた私を追いかけるように両親も逃げた。
そして両親に「あんた最後何したの?」と聞かれたので、「何したように見えた?」と聞き返したところ、「あんた急に何もないところを蹴ったからびっくりした」と答えた。
やっぱり何も見えないんじゃないかと思って、訳の分からないおじさんに急に絡まれたことにした。
大人になってからも、何もないところにぶつかるという経験が何度かある。
やっぱり何もないんだけれど、あの時のおじさんは何か見えていたんだろうか?
もし知っていたのなら、いきなり怒らずに注意すればよかったのに、と今でも思う。