去年の夏の話。
あの有名な富士の樹海で…
あれは大学の皆と、河口湖へキャンプに行ったときでした。
車で行ってたこともあり、河口湖からも近かったし、みんな今まで一度は樹海に入った事があったので、じゃあ恒例の肝試し……
なんてノリで行きました。
ただ、今まで樹海に入った時と違ったのは、霊感の強い、Tという友達が居たこと…
そして、僕達が樹海に着いた時に一目散に逃げて行くエスティマが居たこと…
しかし、それで引き返すわけもなく、僕達が中に入ろうとすると、いつも強気なTが、
「マジヤバイ!これで樹海は三回目だけど、今回は絶対に入れない!」
と言い始めました。
けれど僕達は、それを、肝試しを盛り上げるための嘘だと思い、嫌がるTを軽くあしらって、中に入って行きました。
そして、3分ほど皆で進んだ時でした……
突然Tが、
「ヤバい!!今度こそホントにヤバい!! あの木とその木の間に薄く白い幕が見える!! 多分あの幕をくぐったら俺達帰れなくなる!」
って言ったんです。
今度こそ本当だと思った僕達は、我先にと一目散に走って外に出てきました。
そして、何事もなく出てきた僕達は
「なんだよT、なにもなかったじゃん」
とかいいながら、すぐ近くにあるセブンイレブンで、それぞれ缶コーヒーとか買ったり、雑誌読んだりしてました。
しばらくそうしていると、遠くの方から救急車の音が…
続いてパトカーのサイレン…
それを聞いたセブンイレブンの店員が、「またか…」と一言。
僕達は、その時やっと全てを悟りました。
ここが本当に自殺の名所だったんだという事実を。
あのパトカーと救急車は、樹海の入口で停まるだろうということを。
恐らくあのエスティマは見てしまったのだということを。
そして何より…さっき僕達が歩いていた場所には、首吊り死体があったのだという事実を。