小学校のときに家族で3泊4日の旅行に行った。
その旅館は部屋(2階だったと思う)と、1階のロビーを繋ぐエレベーターが1箇所(2つ)あって、滞在中ずっとそこを利用していた。
だから旅館から外出する時は部屋→ロビーの繰り返し。
異変が起きたのは帰る時。部屋で荷物の整理をしていた親が、先にロビーで待ってなさいと言ったので、俺と弟はエレベーターに乗ってロビーに向かった。
1階について、エレベーターが開いた。
本来なら赤い絨毯が敷かれて女将さんがたくさん居る筈のそこは、薄暗い倉庫みたいな場所へと出た。
倉庫と思ったのは、すぐ右手の位置にビール瓶のようなものが詰まれていたから。
・・・・・の割には正面が和室みたいで、大きな松の木と掛け軸があった。
あれ?と思って弟と顔を見合わせて、取り合えずエレベーターから降りようとした時、そこに人影が見えた。
たぶん老婆みたいな感じの影だったと思う。
正座して俺たちに背を向けていたその影は、徐々にクビだけこちらの方に向いてきた。
(分かるかな?後ろ向きで正座してる人のクビだけ振り向いてくる感じ)
俺と弟はその瞬間から閉まるボタンを無我夢中で連打した。
なんとか2階に戻った俺たちは、ちょうど荷物を纏めて部屋から出てきた両親と会った。
もう一度エレベーターに乗るのは嫌だったが、両親も居たし恐る恐る乗った。
案の定そこはにぎやかなロビー。
結局俺たちが見た部屋は何だったのか分からない。