寒くて仕方ない

寒くて仕方ない 俺怖 [洒落怖・怖い話 まとめ]

会社の同僚は常に霊の存在が見えているらしく年に1週間位だけ霊が見えなくなる時があって人口が減るから清々しいと話してた。
だから、そんな彼は営業先から帰ってきた他の同僚を見ては
「汚い野良犬みたいな犬が3匹いつて来ている」とか
「怒った山鳩が頭の上に乗っている」とか「狐が肩に乗っている」とか、
その狐の尻尾が動いた時にオスだと分かったとか言って笑ったりしてた。
雀とか蛇とか、時には人間の子供がついて来たとか色んなモノが見えてるようだった。
「職場に毎日真っ赤なワンピースを着た女性がやって来て所長の隣に立ってずっと睨んでる」とか職場は二階なのに「窓の外からおじさんが覗いている」とか話してた。

私は信じるけど、怖くはないので面白いなと思いながら興味津々で聞いてた。

ある日、その彼が営業先から帰るなり
「人生で3本の指に入る位怖かった。血みどろの女の人が車のサイドミラーにしがみついて中に入ろうとしてくるし、バックには男の人が車の中をガラス越しに覗いているし」
と話してたので私が「それ何処?」と尋ねると場所を教えてくれない。
「同じ営業方面だし教えてよ」と言っても教えてくれない。
「車で走ってるとアクセルが急に重くなるから分かるよ」としか言ってくれない。
仕方ないので何処らへんかな?と思いながら営業に出るとトンネルに入る緩い坂で
「あれ?車の調子悪いのかな?アクセルがあんまり利かない。」
と思って車の整備出さなきゃいかんかな?なんて考えてた。

トンネルに入ると手首や腰に痛みを感じ始めた。
首筋から頭のてっぺんなかけて寒気が走るし、もしかしたら彼が話してたヤバい場所ってのはこの辺りじゃないか?と思って車を走らせていると峠を越えるまでずっと手首や腰や首筋が疼いてた。
「ここでは窓は開けられないな」と思ったのだけど帰りに忘れて煙草を吸って窓開けっ放しにしてた。
慌てて閉めたのだけど、恐らくその時に何か乗っけてしまったみたいだった。
帰社してから彼に
「何処か分かった!峠に入るトンネルから峠を越えるまでずっとだろ?」
と言うと
「貴方も分かるんですね?そうです。」だって。
それからは風邪引いたのかな?と思うくらい暖房をフルでかけてコートを着込んでも寒くて仕方なかった。

ある日、営業中に友達の所に行ってサボってたら友達が
「今日、今から霊能者のおじいさんが来るけど、構わないなら居ていいよ」と言うから
「別に構わないよ」と言って2人で話してた。
ほどなくして、おじいさんが来ていきなり私に向かって
「あんたの車、後部座席にオッちゃんのお化け載っとるよ。あんた寒かっただろ?結界作っておいたから、お化けの退け方後で教える。」
と言われ、お化けの退け方を教わり帰社。
霊の見える同僚に
「私の車、オッチャンのお化け乗っとるだろ?」
と聞くと、車を見て一瞬、
「おらんよ」と言ったけど、車の後ろを覗き込んで
「あぁ、おるわ。」
私が「どんな顔しとる?」と尋ねると
「普通のオッサン。ほっといたらそのうちにおらんようになるわ。」
とのこと。

私は数日後の休日に友達の家で会った霊能者に教えてもらったお化けの退け方を実行した。
すると
あんなに最強で暖房をかけてコートを着込んでいても寒かった車内が嘘のように緩い暖房でコートを脱いでも快適に運転出来るようになった。

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