九十九里

九十九里 俺怖 [洒落怖・怖い話 まとめ]

この話は、5年位前です。

私と友人の「まこと、かとう」とで、千葉県の九十九里の海岸に遊びに行った時の事です。
私達は静岡県から行くので、九十九里には、朝着きたかったので、夜中にこちらを出る事にしました。
一台の車で、運転は、かとう。
助手席に私、後ろの席に、まことが座り高速で向かいました。
高速を使ったので、予定よりかなり早く東京を抜け、千葉に向かえました。

さすがに東京を抜けてからはスムーズに道を走り、海岸線に出ていました。
すると、かとうがこの海岸線走ると、もうすぐ九十九里だぜ。
っと、嬉しそうに言いました。
後ろの、まことは疲れているのかぐっすり寝ていました。
海岸線を走っていると、ダンダンと朝靄かなんかで、周りが見えにくくなってきて、前の車のテールランプが、やっと見える位に霧が立ち込めて来ました。

「これじゃあー、前の車居なくなったら運転大変になっちゃうね。」

と、運転手のかとうに、話しました。
すると、かとうは、
「そうだね。でも一本道だから大丈夫よ。」
と、呑気な事を言って来ました。

暫くすると、前の車が下りてしまった為に、私達の車だけが走っている状態になりました。
「もうすぐ着くし大丈夫。」
と、かとうが楽しげに話しました。

暫くすると、かなり先の向こうに赤くぼけた光が光っています。

しかも、対向車線とこちらの車線の間、ちょうどセンターラインの所です。
もちろんこちらは走っている為に、その方向に向かっています。
ダンダン光が近くなると、その光は人間の形に見えて来ました。

かとうが、
「こんな朝に赤い服着て、ジュースでも買いに行くのかな?こんな所通らなくても、いいじゃんねー。」
と、変わった人もいるねー。
みたいな感じで話しました。
でも、私にはそんな風にには見えませんでした。
赤いロングドレスを着て、黒い長い髪を靡かせて、うつむきながら歩いている。
しかもすれ違う瞬間に、キツい目で、こちらを睨みつけました。
私は鳥肌が立ちっぱなしで、気持ちが悪いし、ゾクゾクという震えも取れませんでした。

かとうが、
「気持ち悪い女だねー。こっちを睨んでいたよ。」
と、言ってから、かとうの顔が硬直しました。

私が、
「何したんだよー。おい、かとう。」
と聞くと、ルームミラーをこちらに向けて…

「見てくれ」
と、小さな声で、私に言いました。

私が、ミラーを見てみると、なんと後ろに乗っているんです。
しかも、まことに話かけているんです。
真っ青になりました。

そんな時に限ってまことが起きたんです。
「何を硬直してんだよ。
何か良いことでもあったのか?」
と、まことは呑気な事を言ってきたんです。

どうやら、まことには見えないみたいなんです。

私とかとうは、
「何でもないから早く寝ろ。」
と、まことに言いました。
「何だよ二人で、俺も仲間に入れろよ。何かあったのか?」
と、怒った口調で言いました。

その時も、赤い女はまことに話し掛けているんです。

私は、
「おい、寝ろ。着いたら起こすから、いいから早く寝ろ!!」
と、怒りながらまことに言いました。

解ったみたいで、すねながら寝てしまいました。
まことが寝ても、赤いドレスの女は何か話しています。

音楽を止めて女の声を聞くと、

【一緒に来て。淋しいの。貴方、タツヤでしょ。
やっと会えたわ。早くこちらの世界に来て。
行きましょう。行きましょう。行きましょう…】

と、まことに話しています。

(これはまずい!)

私はもっていた数珠をまことに持たして、お経を唱えました。

すると…

【貴方はまた裏切った。また裏切った。
また一人。また一人にする気なの?
許さない。許さないから…
絶対に許さない…!!!!】

と、捨て台詞をはいて、消えてしまいました。

海岸に着いて、まことに本当の事を話すと泣き出しそうになっていました。
震えが止まらないと言っていました。

あれから5年ほど経ちますが、まことの夢の中に、赤いドレスの女が出て来るそうです。

顔だけは、どうしても見えないみたいです。
私とかとうも、あの冷たい女の目だけは、未だに頭の中に残っています。

彼女は何だったのでしょうか?
きっと、辛い恋愛の果てに亡くなってしまったのでしょうか?

私達はあれから
二度と九十九里には行っていません。

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