今から7~8年前、私は海釣りを趣味としていました。
休みの日には、夜釣りをかねて前日から出かけていき、車中で仮眠を取るということも珍しくありませんでした。
ある年のお盆に、嫁は実家へ里帰りしていきました。(毎年の恒例です)
私は、嫁もいないので、夜釣りに出かけていきました。
いつも行きなれているポイントに午後9時頃に入って、投げ釣りに興じていましたが、その日は、不思議なくらいにアタリ(魚信)がありません。
このまま続けても駄目っぽいので、ポイントを替えることにしました。
次のポイントに向かっているとき、国道に出るために曲がらなければならない三叉路を曲がり忘れてしまいました。
でも、国道は右手に平行して走っているので、次の角があればそこを曲がればいい、と安易に思っていました。
何箇所か、曲がり道はあったのですが、すごく細かったり、鋭角に曲がっているため、車を切り返さなくてはならなかったりと、右折するタイミングを先送りしていました。
そのうちに、右手に見えていた国道も、ちらほらと見えていた民家の明かりも見えなくなり、いつの間にか山の中へ向かっていました。
その状態になっても、私としては道に迷っているという意識はなく、また、Uターンする気など全くありませんでした。
そのうち曲がり角があるだろう、いずれ国道に戻れるだろう。
のんきにそう考えていましたが、やがて道は完全に山道になり、Uターンするには厳しいくらいの道幅になっていました。
何気に車内の時計を見ると、午前1時過ぎ。
全く見たことのない山中を走る道に、さすがに私も内心不安な思いが見え隠れしてきました。
そのうちに、道の雰囲気が変わってきました。
山肌がコンクリートで固められています。
何かの施設(工場のようなもの?)に近づいているような感じです。
不意に目の前に鉄製の門が現れました。いやな予感がしました。
門の横には、やはり鉄製の看板が。
「OO町斎場」
私の頭の中は、「お盆」、「真夜中」、「焼き場」、うわーーー、連れてこられた。
パニックです。
Uターンするために、車を何度も切り返し、その最中にも、誰かに窓を叩かれそうな気がして、必死の思い出来た道を引き返しました。
後日、昼間にその道を探しても見つかりませんでした。
Googleマップで検索しても出てきません。
不思議な体験でした。