オカルト大好きS君。
実は俺と一緒にバンド活動をしていて、校内ではそこそこの人気者でした。
俺はギターを、Sはベースを担当していて、学園祭では夜祭などに呼ばれるくらいでした。
いえ、自慢話をしにきたわけではないのです。
当時、学園祭の直後になると、知らない女の子から「友達になってください」というのが多々ありました。
当然俺たちも悪い気はしませんから、いいよいいよと連絡先を交換しました。
学園祭から一月くらいだったか、バンドのメンバー4人に対して、女の子4人組が友達になってくれ、と言ってきたんです。
もちろん快くOKして、後日カラオケにみんなで遊びに行きました。
不謹慎な話なんですが、その時Sだけは彼女がいたんです。
で、女の子も女の子で、4人のうち3人がS狙い。
そして、その相談役はSと一番仲の良かった俺に回ってくるわけで…
損な役回りです。
でも結局Sは彼女と別れる事もなく、浮気する事もなく、何事もなく終わったかのように見えました…。
事件はクリスマスに起こったのです。
結果的にフラれてしまった女の子3人なわけですが…。
クリスマスになってもまだSの事が好きだったんですね。
俺も俺で3人から波状攻撃で相談を持ちかけられ、何とかならないか、とか…どうしようもありませんでした。
だってSと彼女の仲を引き裂いても俺には何のメリットもないですし。
忘れもしません、12月26日。
彼女との時間をたっぷり使ったSに久々に会うと、妙な事を言うのです。
「彼女に殺されかけた」と。
話を聞いてみると…。
Sはクリスマスに自室に彼女を連れ込み、まぁ…アレを始めようとしたわけです。
ですが、彼女の様子が何かおかしいと気付きました。
部屋は暗く、顔を近づけなければハッキリを相手を認識できないほどだったと言います。
突然彼女が静かになったので、名前を呼びかけてみたんだそうです。
ですが、反応はなし。
無視されたと思い、頭に来て肩を掴んで振り向かせたら、いきなり首を絞められたそうです。
そして数人の声で
「何で、あたしじゃないの!?」
彼女は、彼女ではない別の誰かになっていました。
いえ、別の誰かの顔になっていた、というのが正しいとSは言いました。
でも、見覚えはあるが誰だかはわからない、と。
Sは彼女?の腕を振り解くと、頬に平手打ちをしたそうです。
幸い彼女は元に戻り、自分が何をしたか分からなかったそうです。
記憶がスッポリ抜けている、と…
そして正月に、俺の元に届いた3通のメールで全てが繋がりました。
メールの書き出しはみんな同じで、あけましておめでとう、ですが…。
一通目。
クリスマスにSさんに会う夢を見た。
顔は見えなかったけど、Sさんの声だった。
二通目。
クリスマスにSさんに抱きつく夢を見た。
Sさんの匂いがしたよ、懐かしかった。
三通目。
クリスマスにSさんの首を絞める夢を見た。
Sさんが怖がる顔が見えた。
私サドかなぁ。
…つまり、3人同時に…。
見覚えのある顔だったのは、3人が一緒にだったからなのでしょうか。
そして誰、と断定できなかったのも…。
俺はSにこの話をする事ができませんでした。