叔母が欧州で留学していた時の話。
宗教や国、文化が違えど、やはり神様は大切に奉り
悪魔や妖怪や怨霊といった類は恐れられ、専門家が除霊するというのはどの世界でも同じ事。
叔母の留学先の小さな町にも古いしきたりがあり例に違わず、教会でミサ(?)・神事(?)のようなものが行われたそうである。
神父が聖典を読み上げ、皆がお祈りをする。
郷に従えというように、叔母も同じように祈りをささげた。
一通り終え、皆が帰り支度していると、突然 祭壇の左右に飾られていた2枚の絵がガタガタと音を立てて落ちた。
片方はキリストを、もう片方は悪魔祓いをする神父が描かれていたという。
「神が恐れている、何事か。」
神父は不思議そうにつぶやいた。
日本でも神器みたいに、「物」を奉る習慣があるようにそこでは古代の戦士の「矛」を崇めていた。
しかし、その矛を収めた箱が突然バキッと大きな音を立て、そして再び静かになった。
騒然とする中、神父が恐る恐る箱を開けると、「本当にそれで人を攻撃できたの?」ってくらい小さな槍が真っ二つの状態になっていたという。
「盾(シールド?)ですね。」
神父と一緒に覗き込んでいたシスターがそう言った。
盾と矛とくれば、「矛盾」という言葉の話を思い出されるが実際は、矛を盾に叩きつければ矛のが折れるという。
この地方では、盾とは良い意味でも悪い意味でも最高の「守り」の象徴らしい、
悪い意味というのは、幸福や神の祝福すらも跳ね返してしまうほどの力があると信じられており、盾を奉ることはほとんどなかったという。
「しかし、神器ですら折ってしまう盾など・・・!? ファランクスの英雄か!」
ファランクスというのは、陣形の一種で映画「300(スリーハンドレッド)」でも使われたので分かる人は分かるだろう。
ここでは神でも悪魔でもない、しかしながら、それらをも恐れぬ絶大な力を持った「モノ」を「ファランクスの英雄」と言っていた。
それは、古くから人の世にいるらしい、そこでは「盾」と称しているとのこと。
別の地方では剣だったり、神に似た名前であったり、形や呼び名はそれぞれ違っているという。
ただ、あまりにも強すぎるため神も悪魔も関わらず、ヒマを持て余し刺激を求めては気まぐれに行動するという、日本で言う座敷童子の強化版ようなものなのだろうか?
とにかく、そういう存在があるという。
さて、なぜこんな話をしたかというと
「いや、どうもね~連れて帰って来てしまったらしいと、その後 留学先の人から言われてね。」
「え? ということは叔母さんに憑いているんですか?」
「いえねぇ・・・付いて来ただけらしいんだけど、今もこの日本にいるようでね。」
西洋の得体の知れないモノが、今のこの日本にいるとのこと。
神を奉っている家があれば気をつけてほしい・・・