愛媛某所で、ぽっかりと時間ができたのでぶらぶらしていた。
四国は初めてで、何より珍しかったのはミカン収穫のためのモノレール。
乗ってみてぇな、なんて思いながら畑の側をうろうろしていたら、地元のおっちゃんと知り合った。
最初は怪しまれていたけどね。
暇にかまけていろいろな話をした。
近所に若者が少なくなっているのと、おっちゃんが話好きなのとで、ずいぶん仲良くしてもらった。
その時にタヌキの話を聞いた。
畑の上の方の道は隣村まで続く一本道で今でこそ車が通れる道だが、昔は軽トラも通れない道だった。
夜この道を行き来するとタヌキに化かされて、道に迷うのだという。
話に対する俺の食いつきが良かったので
「じゃあ、実際に見せてやるよ」
と、おっちゃんが案内してくれた。
その道の左は山、それも見上げるような斜面で登ろうと思っても登れるものではない。
そして右は谷、木がうっそうと生い茂り、木を抜けたとしてもどこまで転がり落ちるかわからん急な傾斜だった。
「いまは車も通れる」
なんて言っていたが、すれ違うのは難しそうだ。
俺 「ホントに一本道ですね」
「おうよ」
「ここで迷うんですか?」
「おう、ここで道に迷うんじゃ」
「どうやって?」
「そんな事知らん、タヌキに聞けや」
「狐じゃなくてですか?」
「ここは四国じゃ」
「あー、そーか」
俺が、でもやっぱりこの一本道で迷う事はあり得ないと言うと、
「だから不思議なんじゃ。入り組んだ道で迷えば不思議でもなんでもないじゃろ?
この一本道で迷うから『タヌキのせいだ』って話になるんじゃ」
と言われた。
納得できたような、いまいち納得できんような。
その後、行政に対する愚痴が始まったので切りの良い所で逃げてきました。
えーと、大した話でもなく長文すみません