私の祖父は保護司をしていたんだ。
その為、祖父のお世話になった人達が保護者などを伴って、時々挨拶に訪れる事もあった。
私が中学生の時、祖父が亡くなった。
祖父が亡くなってからしばらくしたある日、私が家で一人で留守番をしていた時、高校生くらいの男の子が二人、家にやって来た。
一人は髪を染めてちょっとヤンチャしてます~という感じの少年で、もう一人は少し大人しそうな雰囲気の少年。
「自分たちは以前、○○さん(祖父の名前)の世話になった事がある者です。
○○さんのお仏壇にお線香を捧げたいのですが」
私はわざわざ祖父を訪ねてきてくれる人がいた事に感激し、深く考える事もなく、その二人を家に上げてしまった。
しかし、少年達の態度はどこか変だった。
少年Aが、私の顔や体を食い入る様に見つめてくる。
少年Bの方は、家の中の様子を伺うようにキョロキョロしている。
仏間に案内し、蝋燭や線香の準備をしながら、私は何か妙な違和感を感じ始めていた。
焼香を済ませると、二人はやたら馴れ馴れしく私に話しかけてきた。
「きみカワイイね~何歳?××中学に通ってるの?高校はドコに行くの?
彼氏は?彼氏いるの?デートしてみたいとか思った事ある?」
やつぎばやな質問に私が困惑していると、髪を染めた方の少年が発言した。
「ところで今日って、ひとりで留守番なの?」
蛇のようなねっとりした目で私を見つめる少年A。
その発言を聞いて、明らかにギョッとしているもう一人の少年B。
なんか、変。何なのこの人達。なんかヤバイ、なんかオカシイ。
その時になって、私の違和感はようやくハッキリした形を取り始めた。
「ね・・・ひとり?今日はもしかして他に誰もいないの?」
「・・・・・・おい、止めろよ。止めとけって」
「何だよ、いいじゃん。この子、けっこう俺の好みなんだよね」
徐々に近くに寄ってくるA。
表情を引きつらせながら、それを押し止めようとするB。
「止めろ、何考えてんだよ!!ヤバイって!!」
と、その時。
ぴんぽーん
玄関のチャイムが鳴った。
「すみませーん集金で~す」
「はーい、今出ます!」
慌てて玄関先に飛び出す私。
ほっと肩を落とす少年B。
後で、少年Aが「ちっ」と小さく舌打ちするのが聞こえた。
「もう帰ろ!」
不貞腐れた様子のAは、Bに促されて帰路についた。
帰り際、少年Bは申し訳なさそうに、
「・・・ごめんね」
と、小さな声で謝ってくれた。
・・・と、これが私の怖かった体験です。
レイプとか強盗とか、TV画面の向こうにある世界だと思っていた当時の私にとって、かなり衝撃的な事件でした。
皆さんも、子供を一人で留守番させる時は十分に気をつけてください。