公衆電話から

公衆電話から 俺怖 [洒落怖・怖い話 まとめ]

これは今から10年前の話です。
当時、私には付き合っていた女性がいました。

彼女の名前をAとします。
私は当時アパートで独り暮らしをしていました。
週末は仕事を終えたAが私の部屋へ泊まりに来て、月曜日に私の部屋から一緒に出社するといった感じでした。

その日は、雨の降る金曜日でした。
私は部屋でAが来るのを待っていました。
いつもなら19時までには来てご飯の用意をして、一緒に晩御飯を食べるのですが…中々来ませんでした。

職場の飲み会などで遅くなる日や来れない日は前もって連絡があるので、事故にでもあったのではないのかと心配になり何度もAの携帯へ電話をしましたが、電源が入っていないため繋がりません。
私は、心配になり周辺を捜しに行きました。

Aは実家暮らしで、両親と私は顔見知りです。
私は外を探しながら携帯電話から彼女の自宅へと電話しました。
母親が電話に出て何かあったのかと聞かれ、私の所へまだ来ないので心配になり電話したと伝えると、自宅へは帰宅していないと教えてくれました。
雨の中を探し続けましたが、結局Aを見つける事は出来ませんでした。

もしかしたら彼女は、入れ違いでアパートに来ているかもと淡い期待を持ち帰宅しました。
Aには、合いカギを渡していたので私が留守でも中に入れる状態でした。
しかし期待は裏切られ彼女はアパートに来ていませんでした。

横になっている間にいつの間にか寝てしまった私を、突然の携帯着信音が起こしました。
携帯を見ると公衆電話と通知されていました。
私は何となく電話を取りました。
すると、凄い雨音と女性の声で「助けて」と聞こえて電話は切れました。

気味が悪くなった私はその日眠る事が出来ず、翌日を迎えると昼頃に警察から電話がありました。警察署に来てほしいとのことでした。
私は全く意味がわからないまま、取り敢えず警察署に行きました。

連れていかれたところは、霊安室でした。
そこには、複数個所刺され亡くなったAの姿がありました。
私とAの両親は警察から事件について説明を受けました。

Aは私の住むアパートへ向かう途中で襲われたそうです。
犯人と凶器とAの携帯電話がまだみつかっていないと言われました。
突然の出来事に、発狂しそうでした。

私はその日、Aにプロポーズをするつもりでした。
転勤の話が出ていたので、これを機にプロポーズをして結婚をと考えていました。

無気力になった私は帰宅後、ベッドで眠りにつきました。
もう何時間寝たかわかりません。
突然、深夜に携帯電話が鳴りました。
また公衆電話からです。

携帯に出ると、昨晩と同じ様に凄い雨音が聞こえ女性の声で助けてと言ってました。
私は「悪戯はやめてくれ」と言い電話を切り眠りにつきました。

月曜日からは会社に行くことにしました。
家にいるとおかしくなりそうなので、仕事をする事を選びました。
仕事をする事で嫌な事を忘れようとしていました。
遅くまで仕事をして帰宅する日々を送っていました。
その間も、あの深夜に公衆電話から携帯に電話が掛かってきては同じ様に雨音が聞こえ、女性の声で「助けて」という謎の悪戯電話は続いていました。

彼女の殺人事件の捜査の方は難航しているみたいで、先に進まない状態でした。

1ヶ月ほど経った頃でしょうか。
相変わらず、深夜に携帯へ電話がかかってきていました。
一体この電話は何なんだと思い、何気にカーテンを開けた時おかしなことに気づきました。

外は雨など降っていないのです。

妙な胸騒ぎを覚えた私は女性へ
「どこにいますか?」
と尋ねました。
女性は
「○○中央公園」
と答えました。
さらに気が付いたのですが、女性の声がAに似ていました。

私は携帯を持って公園へ向かいました。
公園へは徒歩で10分くらいの距離です。
公園の薄暗い場所にある公衆電話を見ると、中に女性がいるようでした。

Aでした。

彼女は、涙を流しながら林の方を指していました。
そして「ごめんなさい」と言って消えていきました。

私は、直ぐに警察へと電話を入れました。
そして彼女が指さした林の方を捜索して欲しいと懇願しました。
すると発見されていなかった彼女の携帯電話と凶器のナイフが隠されていて、警察が回収していきました。

この発言で凶器等が発見されたため、最初は私が犯人と疑われてしまいましたが、凶器とAの携帯電話には犯人の指紋が残っていたらしく、事件も解決へと向かいました。
事件の犯人はAへストーカー的な行為をしていた会社の同僚で、執拗に付きまとわれていたのだそうです。
Aからそんな事は聞いたことがなかったので、ビックリしました。

事件解決後、葬儀の席でAの両親からは「新しい女性を見つけて娘の分まで幸せになって欲しい」と言われました。
そして、墓参りなどにも来ないように言われました。
たぶん彼女の両親なりの心遣いだったのだと思います。
公衆電話から電話が掛かってくることもなくなりました。

不思議な体験でしたが、無事に犯人が捕まってAも安らかに眠ることができたのかなと思っています。

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