部下を轢いたバス

部下を轢いたバス 俺怖 [洒落怖・怖い話 まとめ]

俺が15年前、俺が小学生の頃の話。

ある年の2月半ば、親父の会社(○ヨタ)の部下が

「給料が貯まったのでそろそろ車を買いたいから係長(俺の親父)、探してくれ」

と言うので、俺は親父に頼んで、遊び半分で部下の買い物に連れて行ってもらった。
中古車屋の店長は結構愛想のいい人で、特に部下が欲しがった車を見て「あれは今半額にしてます。お買い得ですよ」とベタボメ。
彼はその場で契約した。

半年後の夏休み。
俺や両親が田舎に帰省する準備をしていた矢先、電話があって「○○くん(部下の名前)、郷里の長野で事故にあったそうです!!」って緊急電話があった。
親父が入院先の電話に向った時は、もう脳死状態だった。
帰省するためバイクで国道153号を長野方面に走行中ハンドルを誤って横転、逃げる間もなく後ろから来たバスに轢かれたそうだ。
左半身はつぶれて目も当てられなかったらしい。
でも21歳だったから若さで数時間生きていたけど、結局日付変わって間もなく亡くなった。
親父が一番可愛がっていた部下で、俺は初めて親父が泣いているところを見た。

結局、その年はその部下の葬儀や台風などでスケジュールが狂って帰省は出来なかった。
しかも、秋には俺が学校で窓ガラスを割ったり母が貧血で緊急入院したりと何かとついていない1年だった。

次の年の2月、亡くなった部下が車を買った一年後に部下の実家の両親がうちに手紙と写真を送ってきた。
実は部下が車を買ったとき、その店では車を売ったり買ったりしてくれた人を記念撮影してくれるサービスがあって、俺と親父と部下の3人で撮影してもらった。
その写真が届いたんだけど、親父は「お前は見ない方がいい」とこわばった顔をしたので、「見せてくれたっていいだろ」とせがむと「じゃあ、父さんの横に来い。
決して大声は出すんじゃないぞ」と言うので、首をかしげながら写真を覗き込んだらもうびっくり。

真ん中に移っている部下の左半身がすっかり消えて向こうの景色が透けている。
しかも店の横の道路には、こちらでは走っていない見知らぬバスが写り込んでいた。
だから写真をそのまま見たら、部下に向って後ろからバスが突っ込んでくるみたいに見えたわけ。
そのバスはやや小さく写っていたので良く分からなかったんだけど、あとで聞いた話では部下を轢いたバスと同じ型、同じ会社のものだったそうだ。
同封されていた手紙には、

「このバス、長野でしか走っておりません・・・」

って結んであったらしい。

その手紙はもう気味悪くなって間もなく母がこっそり処分してしまったけど、この事件は俺の生まれて初めての怖い体験だった。

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