ドッペルゲンガー?

ドッペルゲンガー? 俺怖 [洒落怖・怖い話 まとめ]

漏れが大学に入るために上京して2ヶ月くらいたったときの話。

元々霊感とかそんなものはなく、どちらかというと否定派。今でもね。
実家の自分の部屋には、漏れ以外の誰かが居て、夜中とかに部屋の中をドタドタ走り回ったりしてたけど、気のせい気のせい、見えない誰かが走ってるだけって思ってたほど。
まぁ、その部屋からは誰かさんは引っ越したみたいですが。
閑話休題。

当時携帯は高嶺の花で、家電話しか下宿先の安アパートにはなかった。
1Fの道路側の部屋で、外から丸見えだったから何時もカーテンを閉めきって生活してた。漏れは気が小さい人間だしさ。

で、ある日、午前5時とか6時ごろかな。
とにかく早朝。家電話が鳴った。

相手「おい、●▲か?」

その●▲は俺の名前じゃないが、▲だけは合っている。

漏れ「え?違いますが。」
相手「何言ってるんだよ。声いっしょじゃないかよ。●▲だろ?」
漏れ「いえ、●▲ではありません。◆▲です。番号、まちがってらっしゃいますよ。」
相手「あ?だって、xxx-xxx-xxxだろ?」
漏れ「その番号ですが、●▲ではありません。この間引っ越してきましたので。」
相手「はぁ?よくわかんねーけど、まあいいや。わるかったな」

ガチャ
この1本の電話から、未だによく解らない日がしばらく続くことになった。

漏れは現役の時に入試に失敗して、親に土下座し浪人させてもらったんだ。
家が貧乏だったからね。
で、必死に勉強して第一志望は無理だったが、人前で大学名を胸張って言えるところに入ることが出来た。
私学理系だったんだけど、その中でもかなり安い部類の学費だったから、親と婆ちゃんが喜んで行かせてくれた。感謝感謝。
ただ、気が小さいのもあり、親元から離れて一抹の不安がずっとあったんだわ。
そんななか、さっき書いた電話がその不安を増大させることになった。

漏れの前に同じ電話番号を使ってた人と勘違いしたんだろうなと、最初はそう思ってた。
そして翌日のまたもや早朝、同じように電話が鳴った。

相手「●▲、起きてたか?」
漏れ「あのう、◆▲と申しますが・・・。昨日も掛けてきた方ですよね?」
相手「お前、なにわかんねーこといってるんだよ。つきあってらんねーよ」

ガチャ
なんだ、コイツ?と思いながらも、電話番号を間違ってメモしたんだろうなと思いつつ前日と同じくスルーして寝た。

それから1週間とか10日ほどそんな電話がなかったんだが、また早朝に電話が鳴った。

漏れ「もしもし」
相手「起きてるか?」
漏れ「あのう、どちらさまでしょうか?」
相手「俺か?○○だよ。お前、●▲だろ。もう間違いっていうなよ」
漏れ「いえ、ですから◆▲です。多分、電話番号をまちがっておぼえてらっしゃるか、メモを間違えたのではないでしょうか・・・」
相手「書いてもらったメモからかけてんだけどな。昨日も確認したんだよ」
漏れ「ですが、多分間違えですので・・・。失礼します」

ガチャ
このころあたりから、何かヘンだぞと思い始めた。
いくらなんでも、こんなに掛けてこないだろって。

そして翌日。
早朝には電話はなかなかったが、昼過ぎくらいにチャイムがなった。
大学から近いところに住んでたから、授業の合間とかに家に帰っていることが多かったからね。
「はーい」って、ドアチェーンを付けたまま開けると、知らない人がたっていた。

相手「あれ?ここ●▲んちだよな?おたくさん、●▲の兄弟?」
漏れ「え?ここは私の部屋ですし、●▲ではありませんが」

相手の声に聞き覚えがあった。あの間違い電話の声だ。

漏れ「電話、何度かされたかたですよね?」
相手「ん?そうだけど・・・おっかしいなぁ」

相手がそのツレと話してる。なんでも、●▲と瓜二つというくらい似ているらしい。

漏れ「このあたりの違うところにお住いなんじゃないですか?」
相手「ああ、そうかもね」

そういって帰っていったが、ツレと●▲というやつがここに住んでいると言ってたらしいことを話していたのが聞こえた。
なんか、やっぱりオカシイ。おかしい。どういうことだ??

このときくらいから、大学でも買い物途中でも、なんか誰かに見られているような気がするようになってきていたし、電話も早朝のがウザイというのもあったんで、寝るときにモジュラージャックを抜くようになっていた。

ある日、大学から帰ってきてテレビをつけようとすると、あることに気付いた。
リモコンで電源ONにできなかいから、テレビ本体の電源を切ることはないんだが、何故か切れてた。
ヘンだなと思いながらも、何かの時に消したのかもしれんなと気にしないように努めた。
ところが。
次の日も、また次の日も、同じようにテレビ本体の電源が切ってあった。
また、出した記憶の無い参考書が机の上にでていたり、買った記憶の無いペットボトルが冷蔵庫に入っていたり、どうにも腑に落ちないことが立て続けに起こり、余りの気持ち悪さに「何か」があったであろう昼は家に、夜に外出するという昼夜逆転の生活がはじまっていた。
幸いにも夏休みに入ったこともあり、授業には影響がなかったんだけどね。

朝8時頃に眠り、午後4時に起きるという妙なリズムの生活がはじまり暫くたったころ。
久々に友人と会うことになり、待ち合わせ場所の学生会館へ。
昼間に行動すること自体が久しぶりだったが、「何か」に対する不安は消えなかった。そこで待っている間どうしても気になり、家電話に電話ボックスからかけてみた。
やめておけばよかった、こんなこと。

トゥルルルル・・・・ガチャ

「ただいまでかけております。云々」

ホっと胸をなで下ろした次の瞬間、

「はい、だれ?」

エ?誰もいないはずの家に、誰かがいる。そして、電話に誰かがでてる。
卒倒しそうになったが、電話番号を間違えたのかもしれないと何とか気を落ち着けた。

漏れ「えっと、xxx-xxx-xxxxですよね?◆▲(漏れの名前)さんのお宅ですよね?」
相手「その番号だけど、●▲というんだが。」

もう完全にパニックになった。

漏れ「あ、あ、そうですか・・・失礼しました。」
相手「ハハハ、そうか、お前か。会いたかったよ。ハハハ」

本当に卒倒しそうだった。
漏れは、とにかく電話をガチャ切りして、待ち合わせしてた友人に一緒に家に来てくれと頼み、すぐに取って返して家に帰った。

震える手で鍵を開けようとする漏れを怪訝そうに見る友人。
玄関を開け、入る。
特段おかしな様子はない。
部屋のドアをあけても、特段おかしなところはないように思えた。
ホッとした。本当にホっとした。
友人には事情は何も説明せずに来てもらったんだが、何とか誤魔化して遊びにでかけた。
結局、その日は他に何事もなくおわったはずだった。

終電少し前の電車で帰宅後、部屋に入ると留守電が入っていることに気付いた。
まさかとは思いつつ、恐る恐る聞いてみた。
・・・メッセージを録音してください。ピィー。

「はい、だれ?」
「えっと、xxx-xxx-xxxxですよね?◆▲(漏れの名前)さんのお宅ですよね?」
「その番号だけど、●▲というんだが。」

再生を止めた。
昼間のあの電話の内容そのままだった。
すぐさま録音を消し、モジュラージャックを引き抜いた。
テレビをつけ、ひたすら気を紛らわしつづけた。
当時、テレ東で「テレコンワールド」という深夜通販番組をやっていて、それを見ていたことを覚えている。
ふと目が覚めると、昼の12時過ぎ。
いつの間にか机に突っ伏したまま寝ていたみたいで、テレビもつけっぱなしだった。夢だったらいいのに等と考えた。
この期に及んでそう考えねばならないほど、昨日のことが強烈すぎた。

変な姿勢で寝たせいか、体が痛い。
もう一度寝ようときちんと布団で寝ることにした。
午後2時くらいだろうか。
ウトウトとし始めたとき、閉め切ってあるカーテンとカーテンの僅かな隙間に違和感を覚えた。

見てる。誰かが見てる。隙間から誰かが見ている。

道路に面した窓のため、白昼堂々覗き込んでいることになる位置に誰かが居る。
恐怖と同時に好奇心もあり、すぐさまダッシュで窓を開けた。
当然のごとく(?)誰もいない。
普通に通行人がいるだけ。
何もなかったことを良かったと思いつつ部屋に戻り、テレビをつけ見始めたときだった。

ピンポーン

チャイムがなった。
嫌な予感はしていたのだが、どうせNHKか新聞の勧誘だろワロスワロスと応対しに玄関に向かった。
ドアからガチャガチャ音がする。
鍵を開ける音?まさか!
急いでチェーンロックをして開けられまいとドアノブを握りしめた。
しばらく攻防が続いたが、こちらが根負けしてしまった。
ドアが開き、僅かな隙間からこちらを覗いている。

目が見えた。
そして、顔が見えた。

漏れ?それはまさしく漏れそのものかと思えるほどに、漏れそっくりだった。
いや、やっぱり漏れ自身かもしれない。
頭がパニックになった。

そのあと何か言いあいというか何かしらの会話をしたのは覚えているが、他に何も記憶がない。
気がついたら、何故か廊下に倒れていた。
もう既に暗くなりはじめていたから、恐らく午後6時はまわっていただろう。
少なくとも3時間以上倒れていたことになる。
ドアはチェーンロックはしてあるが、鍵は開いている。
そして何故か部屋の窓も開いていた。
体には多少の擦り傷はあったが、幸い他には大きな傷はなかった。
もう何が何だかさっぱりわからない。

言えることは二つだけ。
漏れと瓜二つのヤツが漏れの部屋の鍵をもっていて、はいってこようとした。
そして恐らく、そいつは漏れがいないときに部屋に入っていたらしいこと。
本当に訳がわからない。

これが原因か、その日の夜から体調が激変した。
下痢、嘔吐、発熱がとまらず、全身に発疹ができ腫れ上がった。
翌朝近所の医者に行ったが、蕁麻疹だろうからしばらく様子をみろという。
その間も刻一刻と発疹がひどくなる一方だったため、ワラにもすがる思いで取るものもとりあえず新幹線に飛び乗り実家へ戻った。

実家に帰り、幼少期からお世話になっているかかりつけの医者へすぐさま連れて行かれた。
医者曰く「薬物中毒っぽい症状やね。発疹が皮膚だけやのうて、内臓にも出てるから」治療について聞くと「何もできん。内臓にでてる以上、食事も薬もアカンで」「まぁ2週間くらい寝とり」と匙を投げられた格好。
まさか、こういうことがあったなんてとてもじゃないが言えないし、理解もしてもらえないだろうから黙って聞いてた。
薬物って、確かに漏れはアレルギー持ちだが、そんな言い方はないだろうよ・・・。
たまたま親の知りあいに拝み屋がいるんだが、その翌日家に遊びに来ることになっていた(これは後日聞いた)。

そのオバハン、翌日漏れをみるなり「動くな」と挨拶もせずに命令。
おもむろに首根っこをつかみ、なにやら言い始めた。
どれだけ続いたんだろうか。
5分、10分?結構な時間首根っこをつかみ、たまに背中を叩いて呪文めいたものを言い続けた。
終わったあと、オバハンは

「何があったのか言わんでエエし、聞きたくもない。アンタ(オカンのこと)も絶対に聞いたらアカンで」

といい、何事もなかったようにぬるくなったお茶をすすった。
果たしてその数日後には発疹もキレイに消え、発熱なども全くなくなった。
まぁ助かったんだろうな。

大したオチがないんで申し訳ないが、未だにこの日々のことがよくわからない。
内容的に精神の病っぽいとか色々言われるが、とにかく解らない。
アイツは誰なのか、何が目的なのか、電話のヤツはアイツのツレなのか。
考えれば考えるほど意味不明。
また同じ日が来ないように祈るだけなんだが、また同じような事が起きたら次はどうなるのか・・・気が気でならんよ

糸冬 了

簡単な後日談。

快癒してから下宿先に戻ったんだが、余りに気持ち悪かった為、鍵を変えてもらった。
ついでに二重鍵にしてもらった。
それからというもの、卒業してそこを離れるまで、同じようなことは起きなかったが、気になることが一つ。

その鍵を変えてもらった日から数日後、鍵を変えてくれた大家さんが頓死したってこと。関連はないと信じたい・・・

●▲は、早朝電話野郎の友達らしい。
でも、漏れは知らない。
早朝電話だが、電話のバックがかなりうるさかったんで、飲み屋とかクラブとかからかけてきてたっぽかったのよ。

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