そう言ってAは家を出た。
学校のホームルームの開始時刻は8時半。
だけど、時計の針は8時を回っていた。
Aは急いだ。
いつもの通学路は田園を迂回する道なのだが、今日は田園の中を突っ切った。
まだ舗装が完璧ではない道を通ったからか足元は泥だらけになってしまった。
今回遅れると放課後まで居残りをされられてしまう。
田園を抜けて国道を渡ると学校はすぐそこにある。
Aは走った。
あとは国道を渡るだけ。
国道を走り抜けると後ろでドン!っという音が聞こえた。
振り返ってる余裕はない。
Aは足を進めた。
気づくとAは学校の階段を上っていた。
Aのいる一年の教室は一番上の4階にある。
Aは階段を上る。
しかし、いくら登っても一年の札の教室が見えてこない。
どこの教室の札も何も書かれていなかった。
その時、Aは気付いた。
学校に入ってから誰一人として会っていなかったことに。
Aは周りを見渡す。
しかし、周りには誰もいない。
教室には人影が無く、机と椅子だけが綺麗に並んでいた。
Aは階段を降り始めた。
学校から出ようと思ったのだ。
しかし、降りても降りても窓からの景色は変わらない。
Aはさみしくなって階段の踊り場で叫んだ。
すると、教室から賑やかな声がするのが聞こえた。
やっと誰かに会える。
嬉しさの気持ちがいっぱいになりAは教室を覗いた。
するとそこには人型の黒い影が蠢いてた。
黒い影はズルズルと教室の中を這いずり回ったり、椅子に座ったりしている。
見た目はおぞましかったがそれが発する声はどれも子供の声でそのアンバランスさが余計に気味が悪い。
Aは叫びそうになった。
しかし、そいつらに気付かれたらいけないと思い、口を押さえてトイレに駆け込んだ。
その時鏡を見て気付いたのだ。
自分もその黒い影になっていることに。