メガネが無いのに

メガネが無いのに 俺怖 [洒落怖・怖い話 まとめ]

俺ってひどい近眼なんだよね。
この前職場でこけてメガネ壊したんだけど、その日は半日メガネなしで何とかやってたんだ。
メガネ修理の為、早めに仕事上がって地下鉄に乗った。
有楽町線だけど、最初は周囲がぼやけるわ、遠近感はうまく掴めないわで、ちょっとびくびくしてた。

でも池袋につく前には少し慣れたかな、と思っていると。
ぼやけた雑踏の中に、そこだけくっきり見える物があった。
どう説明していいのか分からないけど、何か眩暈がしそうだった。
なるべくそちらを見ないようにして、人波につられて歩いたけど、もう一回見てみたい誘惑にかられた。

それは物じゃなかったんだ。

色彩が無かったから物に見えたけど、人間のようなものだった。
背のひょろっとした中学生くらいの男の子。
俺がまばたきしながら通り過ぎようとすると、うつむいたまま横移動。

もう気づいてたよ。
これが生身の人間じゃないことは。
だって、俺は壁際を歩いてた。
そいつは壁に写った映像だった。
俺は眩暈がひどくなって、吐き気がしたよ。

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