死んでいたはずの母

死んでいたはずの母 俺怖 [洒落怖・怖い話 まとめ]

これは、某集合団地にて死後約2日で見つかった70代のお婆さんの話。

12月に差し掛かったある日、管理役員の私の所に30代と見られる女性が来訪された。

女性「母が単身でこの団地に住んでまして、先ほど母の自宅から電話がかかってきましたが応答が無いんです」

私「え?おっしゃっている意味がよく分からないんですが・・・」
女性「家からかかってきたのは間違いないんですが、後ろで多分演歌が流れてまして、向こうに話しても全く応答しないんです。もしかしたら具合が悪くて、電話したところで倒れてるかも知れませんので部屋に入るのに立ち合ってくれませんか?」

私「分かりました。もう一人立ち合う役員を連れて行きますがよろしいですか?」

女性「はい」

本来は警察にも来て欲しかったが、身内の人間がいるので私達だけで中の様子を見ることにした。
玄関のチャイムを何度か鳴らすも、応答は無い。
外から電話をしてみると、呼び出し音が中から聞こえた。
つまり、“受話器は下りている”ということになる。
結局、合鍵を使って玄関を開け、中に入った。

玄関の入口に入ると、中からの音は全く無く、明かりは点いていた。
さらに奥へ入ると、・・・居た。
正座をして後ろに倒れる形で、タバコが燃え尽きて脇のじゅうたんを焦がしていた。
駆け寄る娘さんを見ながら、私は警察と救急車を呼ぶ電話を携帯からした。

結果、救急隊は直ぐ帰り、警察関係者のみが残り、私達は事情を聞かれることになった。
警察の見解では、お婆さんは死後約2日で、電話をかけた形跡も、その部屋のテレビとラジカセは電源も入っていないということだった。

死因は脳溢血らしく、即死だったとの事。
確か、私の所に来た娘さんは、「先ほど電話がかかってきた」と言っていたが・・・。
お婆さんは踊りが好きだったそうで、BGMに使っていたと思われるカセットテープがラックに幾つかあった。
ただ、ラジカセにはテープはセットされていなかった。
それに、お婆さん宅の固定電話はプッシュ式の懐かしいシンプルな機械だったので、リダイアル機能は無かった。

色々と不思議に思いながら、タバコから火事が起きなかったことにホッとした出来事だった。

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