そのときの私は何もかもに疲れ果てていた。
まさしく何もかもに。
終わりのない苦しみのように降り続く雨の中を私はひとりでさ迷い歩いていた。
まるで死に場所を求めるかのように。
この孤独を忘れるためには死しかないような気がしていた。
死だけが私の孤独を癒してくれるような気がしていた。
何時間もさまよいつづけ、気がつくと見知らぬ街に私はいた。
ふと目を落とすと、そこには美しい硝子の小瓶。
何気なく私はその小瓶を拾った。
中には少女が詰められている。
壊れそうなほど美しい少女が詰められている。
少女は私を見て優しく微笑んだ。
その少女の笑顔で私は救われたような気がした。
私はまだ生きていけると思った。
私は彼女に微笑み返し、瓶ごと彼女を口に入れ、ゆっくりと噛み締めた。
生温かい血が口の中に広がり、やがてそれは口元から滴り落ちる。
それは少女の血か、それとも私の血か。
静かに、美しく、終わりのない苦しみのように、少女の悲鳴が辺り一面に響き渡った。