7年前、私、国分寺に住んでおりましてその時の話をひとつ。
私、走ることが好きでその時も住宅街を軽くジョギングしていました。
決まったコースを走るんですが、走り始めて10分も経った頃、とある曲がり角を通り過ぎてすぐ、背後にとある気配を感じたんです。
別に振り向くまでもない、こっちは一所懸命集中して走ってますから。
しばらくしてその気配が『音』を出し始めたんです。
油のきれた自転車がだす甲高い音といえばいいでしょうか。
「き―ぃ、き―ぃ、き―――ぃ」
って。
こっちは「なんだ、ウルセェな」ぐらいに思っていました。
因みにに走っているコースは直線で住宅街が建ち並んで脇道、角なんてありません。
煽るように『気配』はついてきます。
今度は長い棒を引きずるような音が加わりました。
「からっ、からっ、からっ」
って。
私、頭に来まして突き放してやろうとペースをあげダッシュに近い状態で走りだしました。
どっこい気配はついてきます。
息があがりだして熱くなった私の頭にふと疑問がわきました。
「なんで(気配が)でてきたときに音がしなかったんだ?」
些細なことですが途端にいやーな汗が流れだしました。
振り切ろう、という気持ちから抜かれたくない、抜いていく『気配』がどんなヤツだか見たくないという気持ちになりました。
走って、とにかく走って。
しかし『気配』は余裕をもって追いかけてきます。
まるで狩人においつめられる獲物のような感じでした。
直線は国道に続いていてそこは明るかったのでそこまではと思い力をふりしぼりました。
ちょうど直線の終わりに見通し確認のための丸いミラーがあってようやくそこまでたどり着いて荒くなった呼吸を整えようとしてふとうえのミラーをみました。
ミラーに真っ黒い影がぶあーっと広がりすぅっと消えていくのがみえました。
私の頭になぜだか「死神」という言葉がうかびました。
その一件以来変な体験はないのですが。