つぶやく老人

つぶやく老人 俺怖 [洒落怖・怖い話 まとめ]

夜勤だったから今日の朝の電車で帰って来たときの話。

いつも通り渋谷から東急線で自宅のある元住吉に帰ろうと、前から2両目の電車に乗った。
普段からこの時間の下り(渋谷→横浜方向)は空いているから、普通に座れるし静かなんだけど、今日は目の前に酔っ払いの老人が座っていた。

老人はずっと目は半開きで独り言をつぶやいてた。

「結局俺がやるんだろうよ…云々」
「だからさ、早苗さんには悪いんだけど…云々」
「まさかねぇ、子が先にいく(逝く?)なんて親不孝もいいとこだよ…云々」
「一人はつらいよ、本当に…云々」

みたいな事を…。

私は視線を合わさないようにしながら座り、やっと元住吉駅にたどり着いた。
さて、と私は立上がり電車が止まる前にドアの前に立った。
しかし自分の真後ろに人の気配がした。なんだ、と振り向こうとすると

「やれやれだな○○、お前はいつもこうなんだ」

と老人の声がした。○○は私の名字で、どうみても私が見た事ない人だったからギョッとした。

「だ、誰?」

私は思わず声が出てしまった。
老人は憮然とした様子でそれを見ながら一言。

「財布落とすんじゃねぇカス、だから早苗に逃げられんだよ!」

財布には名前の入った社員証が付いていた。
元妻の名は早苗だった…。
私は「あ、すいません」と財布を取って逃げるように改札まで行った。

偶然ってあるんだろうね…
高架で綺麗になった駅を見ながら初めて不快な気持ちにさせられたよ。

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