これは私が数年前体験した話です。
なかなか口に出す機会がなかったのですがここで書く事によって少しでも気が紛れたら、と思います。
昔私が住んでいた町に小さな山のような場所がありました。
その山の頂上にお稲荷さんを祀ってある社があり、中腹には防空壕、古井戸、お墓があるという子供には恐ろしい場所でした。
私が高校生の頃、地元の友人たちとその山で肝試しをすることになりました。
まず私と友人の一人Aと一緒に下見に行きました。
Aは幽霊とかを信じず、まったく怖がらないタイプでした。
まず中腹を見て周ります。
雑草に囲まれた古井戸は、厚い木の板といくつかの大きな石、その上針金で蓋がされていました。
私たちは、なぜこの井戸がこんな厳重に封をされているか、この時点で疑問に思うべきでした。
そして、肝試しなど止めるべきでした。
そして、頂上の社を見て、肝試し用の紙切れを置いて下見は終わりました。
深夜、十二時ごろ友人皆が集まりました。
まず、皆で中腹まで行き、懐中電灯を持ち防空壕、墓を見て周りました。
皆わーわー騒いでます。
そして古井戸のところまで来ました。
皆中を覗いてみるつもりでした。
下見のときに針金で縛られていると知っていたのでラジオペンチを持ってきてました。
私が錆びた針金を切ります。
針金を切り終わったら、今度は皆で協力して石を持ち上げます。
せーので持ち上げ、投げるぞの掛け声で周りに投げ落とします。
そして、石をどかした後、懐中電灯で木の板を照らすと、皆ウッと黙り込みました。
木の板に古い御札が貼ってあったのです。
嫌な空気になります。
皆心持一歩下がっているように思えました。
Aが「こえー」と言うと、皆「やばくねー?」などと普段の空気に戻りました。
だけど、私やもう一人、怖がりの友人は完全にビビってます。
止めはしませんでしたが、今すぐ井戸を元に戻したかった。
Aたちが木の板を持ち上げ、投げ捨てました。
そして古井戸を覗きます。
私たちも恐る恐る覗きます。
井戸の中は真っ暗で、懐中電灯の光を当てても何も見えません。
井戸の中はひやっと涼しく、冷気が漂っています。
皆、大声を発し、声を響かせて遊んでいます。
Aにいたっては唾を垂らしてます。
声の反響を聞く為、耳を澄ましていると、奥から「カリッ」という音がしました。
皆、ん?という表情をして顔を見合わせました。
しばらく静かになって耳を澄ましました。
また、奥から、さっきよりはっきりした音で「カリッカリッ」と聞こえます。
「何だこの音?」と、誰かが言ってます。
私がふと、先ほど投げ飛ばされた板を見ました。
そして私は見てしまったのです。
木の板の内側についた、無数の爪痕を。
そこで私は理解しました。
この古井戸には”何か”がいる。
そして、今井戸の奥から地上へ這い上がってきてると。
腹の奥からイイイイと叫び声が上がると私は逃げ出しました。
皆も私の様子に驚いて走って着いて来てその場所から逃げていました。
その後、駅前のファミレスへ行き、そのことを話しました。
皆顔面蒼白です。Aはあまり信じていないようで、その爪痕を確認しようと言うのですが、誰も一緒に行こうとするものはいませんでした。
その後、解散するのも気味が悪いのでAの家に行きました。
そして、Aの部屋に入り、電気をつけ、扉を閉めたとき、Aが叫び声を上げました。
部屋のドアの内側に、無数の爪痕が付いていたのです。
そして、その近くにはお面のようなものが落ちていました。
私たちはそのまま次の日一番でお寺に行き、お払いをしてもらいました。
幸いその後何も起こっていませんが、とても気味が悪かったです。
これで私の体験した話は終わりです。