四谷の新宿通り沿い、某ビルの地下にレトロな店構えのレストランがあるんです。
初めて同僚にその店に連れて行ってもらった時、食後にトイレに行こうと同僚に場所を聞いたら
「トイレは店の外なんだ。あっ、出るけど気にするな」
と言われました。
私はその時酔っ払っていたので何の事かも深く考えずトイレに向かいました。
和式の個室が2つと洗面台だけの小さい間取りのトイレでした。
どちらも鍵は空いており無人だったので左側に入り、用を終え洗面台で手を洗っていたら『バタン』と凄い勢いで個室のドアが閉まりました。
もし、人が入って来たのであれば、洗面台の鏡に反射して絶対に見えるはずなのですが…。
薄気味悪さで酔いは一気に醒め、両方の個室のドアを開けてみましたが勿論誰もいませんでした。
ドアの立て付けが悪いのだろうと自分に言い聞かせ、鏡の前で濡れた手で髪を整えていたら、背後を誰かが通り抜けていく気配を感じました。
何度も言う様ですが私は鏡の前に立っていたので、誰かが背後を通れば絶対に鏡に映るんです。
さすがに恐くなり走って店に戻ると同僚が
「なっ、出るだろ。俺も最初は怖かったけど、今はもう慣れたよ」
と一言。
そして同僚は顔見知りのウェイトレスの娘に話し掛けると、彼女も私と同じ様な経験を何度もしてると教えてくれました。