濃霧

濃霧 俺怖 [洒落怖・怖い話 まとめ]

これは私が20歳の時に体験した話です。
当時の私は専門学校に通っていて、そこで知り合い仲が良くなった友人A、B、C、Dがいました。
私達5人は、休みの日はよく一緒に行動をしていました。

男5人が行動を共にするので彼女など出来る訳もなく、そのうちAが車を中古で購入したので、出会いを求めて海へ行こうと若者らしく出かける事になりました。
しかし海水浴に出かけたのは良いのですが…残念ながら女性と知り合う事は出来ませんでした。
全員で、世の中そんなに甘くないよなと言いながらAの運転で帰宅することとなりました。

帰り途中で夕飯を食べドライブをしながら帰宅していました。
山道に入ったところで霧が出始め、徐々に濃霧へとなっていきました。
運転中のAに

「前、見えないけど大丈夫か?気を付けて安全運転で行けよ~。」

などと話していました。
Aも、かなり慎重にスピードを緩め運転していました。
ルームミラーを見ると後ろもほとんど見えない状態で、Aも緊張感が半端ない状態で運転していたと思います。

車を30分程走らせたでしょうか。
突然凄い光が舞い込んできました。
自分達5人は最初、対向車か後続車かと思いました。
そこでAには濃霧で事故にならないよう、ハイビームにしてクラクションを鳴らし、こちらの所在を知らせるように言いました。
Aはすぐにハイビームにしてクラクションを鳴らしましたが、反応はなく光が弱まる事もありませんでした。
取り敢えず、スピードはこのままで進むことを選択しました。

皆でルームミラーから光を見ていると、光の向こうから人影が凄いスピードで追ってくるのが見えました。
突然の恐怖が私達を襲い

「なんだあれ!?スピード上げろ!!」

と騒ぎ出しました。

しかし、人影はどんどん追ってきます。
いまにも車に追いつきそうなスピードです。
濃霧なので道の先がカーブなのかわからないので、出せるスピードの限界もあります。
そしてついに人影が車の近くまで来た時、話し声が聞こえてきたのです。

「遊んでお願い遊んで」

絶対に止まるな!スピード落とすな!と叫び、Aも

「わかっている安全運転で出来るだけ頑張って影を吹っ切る」

と言い必死に運転しました。
人影はついに車に追いつき、そして消えていきました。

その後霧は晴れ、無事に山道を下りました。

私達は、あの人影は何だったのだろう?と話ながら山道を下ったところにあるコンビニに入り、飲食物を買って車に戻りました。
地元に戻ったところで、私とBとCをAが自宅まで送ると言ってくれたのですが、夜遅くなるからと言い車を降りて別れました。

私達と分かれた後、AとDは車で交通事故に遭い亡くなりました。
事故は見通しの良い直線道路で、不可解な点があるとの事で直前まで一緒に行動していた私とB、Cは警察に呼ばれ事情聴取をされました。

事故内容を聞いたのですが、車が電柱に衝突して即死とのことでした。
現場は見通しの良い直線道路でしたが、とは言えかなりのスピードで激突したというのです。
また、エンジンには女性の髪の毛のようなものがこびりついていたとのことでした。

私にはもちろん、B、Cにも心当たりなどあるはずもなく、警察にもそのように話しました。
ただ唯一心当たりがあるとすれば、海水浴の帰り道に通った山道での濃霧と、光から追ってきた人影です。
一応警察の方にその話をしたのですが、昨晩はその辺りは霧は出ていないという返事が返ってきました。
それに加えて、同じ様な話をする交通事故者がいるという話も聞かされました。

あの人影が一体何だったのか、いまだにわかりません。
あの時は、車を所有し運転出来たのがAだけだったので、Aと自宅が近くだからと最後まで一緒に同乗したDが、私達のかわりに犠牲になってしまいました。
今は私も車の免許証を持って運転するようになりましたが、あの山道だけは二度と行かないようにしています。

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