これはちょうど今ごろの話です。
K子さんは彼氏と遠恋している大学生でした。
遠恋といえど二人は地元は同じで、長期休みには地元でいっしょに過ごすことができました。
大学4年生の時の夏休み、彼女は7月の下旬から休みでしたが、彼は8月からでした。
先に地元に帰った彼女は、毎日のように電話をして、
『早く会いたいよー』
と甘え、彼氏も
『休みになったらすぐに帰るよ』
と答えていました。しかし、8月を目前にひかえたある日。突然彼が、
『ごめん、帰るのちょっと遅くなりそうだよ』
と言ったのです。
当然彼女は不機嫌になり理由を問いただしましたが、研究やバイトが忙しくて、ということでした。
彼女もしぶしぶですが納得し、毎日電話をする日々が続きました。
そして8月8日の夜突然彼の両親から電話があり、彼が7月の終わりに亡くなっていた事を知らされました。
部屋で趣味のギターを抱えたまま。
死因は心臓発作でした。
夏休みに入っていたので、学校の友達も気づかず死臭に気づいた隣人が通報したそうです。
『彼は私と電話していた・・・』
彼女は心労と恐怖で体をこわし、病院に入院してしまいました。
8月14日の夜、いつもと病室の雰囲気が違うことに彼女は気づいていました。
空気が生ぬるく、動かないのです。
不審に思っていたその時、急に空気が振動しました。
コツン、コツン、コツン・・。
彼女にはそれが彼の足音だとすぐにわかりました。
不思議と恐怖は無く、静かに彼があらわれるのを待ちました。そして、
『ただいま、待たしてごめんね』
彼が生前とはまったく変わらぬ姿であらわれました。
『会いに来てくれて嬉しいけど、あなたは死んでいるの!ここに来てはいけないの!』
彼女は精一杯彼にうったえました。
『馬鹿だなあ・・・・・・・、お盆以外のいつ帰って来いっていうんだ?』
恐怖に凍りついた彼女に
『来年も、再来年も・・・会いにくるよ。君から僕に会いに来れるようになるまで。』