土曜の深夜に遠出から帰宅する為にマイカーで国道を走ってたら山道でバイクが倒れてた。
ロスマンズカラーのCBR。
ハザード付けて車を路肩に停め、シートベルト外すために一瞬視線をそらして車外に出たらバイクが消えてた。
周囲に散らばってた部品の破片とかも綺麗サッパリ消えてた。
遠出で疲れてたし、ぶっちゃけ眠かったから寝ぼけた状態で運転してたのかと思ったけどガードレールのところに花と缶コーヒーとかが供えてあるのを見つけて急に背筋が寒くなって慌てて車に乗り込んで発進させた。
山道を抜けたところにあるパーキングエリアでトイレに行って自販機でコーヒーを買い、車に戻り飲んでいると電話に着信があった。
メチャ焦って、ちょっとこぼしたけどスマホの画面を見ると、前の職場の先輩からの電話だった。
電話に出て、先輩と近況やら他愛もない話をしていると段々と先輩のテンションが下がっていった……
というか、何だか怒っているようで、ついに会話が途切れて、先輩が一言俺に言った。
「なぁ、一言言わせて貰うけど、非常識じゃないか?」
俺は先輩が何故怒っているのか分からないし、非常識って何の事だろうと、頭の中がクエスチョンマークだらけで
「え? ひ、非常識って……なんすか?」
と聞くのが精一杯だった。
少しの沈黙の後、先輩が堪忍袋の緒が切れたといった感じで怒鳴った。
「だからよ! 人が電話で話してる時に、横でバカでかい声でゲラゲラ笑ってるのが非常識だって言ってんだよ!」
俺は背筋がゾッとして、助手席や後部座席を見回して慌てて先輩に言った。
「あ、あの、先輩! 俺、今一人で車に乗ってて俺の車の他には誰も居ないんですけど……」
先輩は「え?」と言ったっきり黙ってしまって、俺も黙って、1分くらいはお互い黙ったままだった。
先輩は気まずそうに「お、おう、そうか、また電話するわ」と言って電話を切った。
すっかりビビった俺は、帰りにコンビニでも寄って夜食でも買う予定を止めてまっすぐ家に帰って、布団を被ってすぐに寝た。
まあ、なかなか寝付けなかったんだけど。
その晩は若い男がゲラゲラ笑いながら俺を追いかけてくる夢にうなされた。
実話だよ。