御坂旧道の怪

御坂旧道の怪 俺怖 [洒落怖・怖い話 まとめ]

おとといのことです。
9連休まっただ中。何もすることがなく社員寮でウダウダしていたのですが
同期の同僚4人でドライブがてら富士急ハイランドへ行きました。
メンバーは、運転手のオレ、助手席のA、後部座席右側B、左側C。
全員が県外出身で今年の4月に今住んでいる寮に入った仲間です。
富士五湖はさすが観光地だけあり、湖畔では渋滞に巻き込まれましたが久々の遊園地。男4人でしたが楽しいひと時を過ごせました。

帰りの道中、河口湖を抜け御坂峠に入り御坂トンネルを通るはずが間違えて御坂旧道へまっしぐら。
頂上には太宰治が宿泊していた「天下茶屋」と河口湖畔の夜景と富士山が見えるのでそのまま車を走らせることにしました。
これが間違いの元であの時、引き返して新御坂トンネルを通ればよかったのですが・・・・・

天下茶屋峠につき夜景見たり写真撮ったりして、天下茶屋脇の自動販売機でジュースを買ってしばらく休憩をしました。
この時、夜の9時を回っていましたが峠にはツーリングの連中や親子連れやカップルなどでにぎわっていました。
「そろそろ行くか」ということで車に乗り、真っ暗なトンネルの中へ。
このトンネルは言わずと知れた「出る」トンネルで有名だそうですが、オレら4人とも霊感なし。
暗いトンネルを難なく抜け、今度は下り坂。
街灯がほとんどなく、対向車もいないのでハイビームにして山道を下っていました。

突如、右側から黒い影が見え
(あっ)と思う瞬間と同時に
ドカン、ボコ  鈍い音がしました。
(人轢いた・・・・・)
オレは車の外へ出ました。
「大丈夫ですか?」と声をかけたが誰もいない。
Aたちも外へでてきましたが、辺りは暗闇で人の気配さえありませんでした。
確かに人が右から車の前をよぎり前のバンパーにぶつかったのに、人がいないのです。

俺「誰かダッシュボードから懐中電灯持ってきて」
Aが助手席のダッシュボードから懐中電灯を出し、辺りを照らした。
車の下も見たけど何も見えない。
「確かに轢いたよな。動物じゃなくて人間だったよな」
前のバンパーがへこんでいたので何かを轢いたことは間違いない。
右から出てきたのは白っぽい服を着た髪の長い女だった。4人とも見ている。
しかし肝心の轢かれた人がいないのだ。
とにかくオレらは警察に電話をした。

パトカーが到着するまで15分くらいだったと思う。やけに時間が長かったように感じた。
ポリ公2人がパトカーから降りてきた。
オレはてっきり救急車も来るかと思っていたがパトカーだけだったことに違和感を感じた。

制限速度30キロだったが50キロは出てたと思う。
遺体は遠くに飛ばされたのかもしれないのにポリ公2人は慌てる様子もなく、俺に向かって
「君が撥ねた人ってこの辺りから急に飛び出てきた白いワンピース来た女性かな?」と言い懐中電灯を向けた。
そこには枯れた花束が3つ置いてあった。
ポリ公の1人がパトカーから花束を持ってきてその場所に置いた。
「君が轢いたのは幽霊だよ。君の車と同じで県外ナンバーのドライバーがよく被害に遭うんだよね」

幽霊を見たことを恐怖とは感じず、人身事故じゃなくてよかった。と安心した。
パトカーが去り、オレらも車に乗ってそのまま坂を下った。
何分くらい経っただろう?いっこうに山道は終らない。

突如、右側から黒い影が見え
(あっ)と思う瞬間と同時に
ドカン、ボコ  鈍い音がした。

オレは急ブレーキをかけた。
後部席右に座っていたBが「おい、あれ」と言って右後ろ方面を指差す。
オレは車を少しバックさせた。車のライトに照らされたBの指差した所には3つの枯れた花束が。

オレは無言で車を走らせた。しかしいつまで経っても山道は終らない。

突如、右側から黒い影が見え
(あっ)と思う瞬間と同時に
ドカン、ボコ  鈍い音がした。

車をバックさせて右を見ると枯れた花束が3つ。
俺たちはどこかに紛れ込んでしまったのだろうか?
Aはオレに「天下茶屋に戻って河口湖方面へ下れ。旧道を抜けたら今度は右に曲がって新御坂トンネルに行くんだ」と言った。

オレはハンドルを何度か切り返してUターンして山道を登り始めた。
旧御坂トンネルが見えてきた。
トンネルの入り口で作業着を着た幽霊を見るって噂だがオレらは見なかった。
このトンネルは明かりがないので真っ暗だが、真ん中らへんまでくるともう一方の入り口が見えた。
数台の車やバイクのライトが見える。(もう安心だ)

その時、対向車が来た。赤いライトが光っている。
パトカーか?
すれ違う時、車が急にエンストした。
C「はにゃぁ・・・○×△@#%*・・・・・・」と変な声を出した。
横を見るとさっきのパトカーのポリ公が車のガラスに顔をはりつけてオレらの方を見てる。
ニヤぁ~と笑ったかと思うと舌をベロンと出した。
舌は顎舌まで届いていた。
オレはキーを回したがエンジンがかからない。
焦った。
何度も何度もキーを回したがエンジンがかからない。

ドスン  ボンネットらへんで音がして前を見ると
A「アワァァァァ・・・・」 
もう1人のポリ公がボンネットに大の字になりフロントガラスに張り付いてニヤニヤしながら車の中のオレらを見てた。

ここで記憶が途切れた。
多分、失神したんだと思う。

トントントントン

誰かが運転席側の窓を外から叩いた。オレは目覚めた。
40代半ばくらいの男性だった。
バックミラーを見るとオレらの後ろに車が止まっていた。
車の中には奥さんらしき女性と小学生くらいの子供が2人いた。

男「どうしたんですか?大丈夫ですか?」
オレ「えっ?オレら・・・・・」
男「私たちがトンネルに差し掛かった時、あなた達の車が止まっていたんですよ」
オレ「あ、すんません。今動かします」
A、B、C3人とも起きた。
キーを回すとエンジンがかかった。
トンネルを抜けると天下茶屋峠には数人の人がいた。
時計を見ると朝8時を過ぎていた。

オレは天下茶屋峠を下り、新御坂トンネルを通った。
10時過ぎにオレらは無事に寮にたどり着いた。

昨夜の出来事は夢だったのだろうか?
みんな無言だった。
部屋に戻ってオレは寝た。
夕方起きて部屋の窓を開けた。
オレの部屋からは駐車場が見える。
オレの車も見える。
バンパーがへこんでいた。

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