これは、私の従兄(以下K)が実際に体験した話です。
Kは不思議な夢を見た。
いつの間にか、真っ暗闇にKは居たそうだ。
遠くの方でかすかにゴリゴリとかボキボキとか、変な音がする。
その音は決して気持ちの良い音、とは言えない。
Kは、何か嫌な予感がしてその音がする方へ走っていく。
次第に音が大きくなっていくのが分かった。
そして、いつの間にかすぐ横で、何かがぼうっと光っているのに気付いた。
そちらを見ると、着物を着た女の子がこちらに背を向けて座っている。
どうやら、音はその子が発しているようだ。
Kはその女の子の前に回り込んで何をしているのか見ようとした。
しかし、その光景を見た瞬間、Kは何とも言えない感覚に襲われたそうだ。
口が異常に大きな、こけしのような女の子が、Kの妹を足の方から喰っているのだ。
女の子が口を動かす度にゴキゴキ音がする。
妹はすでに気を失っているようだ。
あまりの惨さにKは座り込みそうになったが、妹を助けなければ、と思い、その女の子を蹴り飛ばし、妹を抱き上げ必死に名前を呼んだ。
しかし、妹は気がつかない。
後ろの方で、女の子はうめいている。
とにかく、今のうちに逃げてしまおう、と思い、Kは妹を抱えて走り出した。
少し走ると、前方にドアがぼうっと浮かび上がってきた。
Kは「あそこまで行けば助かる!」と思い、必死になって走り続けた。
そして、後少しで辿り着く、というところで、背後に女の子の気配を感じた。
このままでは追いつかれてしまう、と思うがドアはもう目の前。
手を伸ばしてドアノブを回し、まさにドアの向こうへ行こうとした瞬間、服を引っ張られ、Kは後ろに倒れてしまった。
目の前には女の子の顔。
その子はKの耳元で
「許さない許さない許さない喰ってやるお前も喰ってやる!」
と、かすれ声で呟いた後、Kの耳に喰い付き、そのまま引きちぎった。
痛みと恐怖に悲鳴をあげ、その女の子を殴り飛ばし、妹を再び抱え、ドアを通った後、勢いよく閉めた。
その瞬間目が覚めた。
あまりの気味の悪さに息が切れ、汗でびっしょりになっているが、そこから抜け出したことに安著の溜め息をついた。
しかし、その瞬間
「今度は皆喰ってやる」
と耳元で聞こえたそうだ。
驚いて振り向いたが誰も居なかった。
それから、あの夢は見ていないそうだが、ただの気味の悪い夢ではなかったらしい。
現に、妹さんはこの3年間で2度も事故に合い、2度共足を骨折している。
それから、Kは右耳(ちぎられた方)があの日以来聞こえにくくなったそうだ。
もう二度と見たくはないし、そう祈っているとKは言っていた。