かまくらの中にいた老夫婦

かまくらの中にいた老夫婦 俺怖 [洒落怖・怖い話 まとめ]

正月休みに実家に帰ってる途中、スリップして事故った友達の話。

友達の話そのまま書くから、人称『俺』形式で書きます。
山の中で深夜、車も通らないし当時携帯も無いから最悪。
トボトボと山道を歩いていると、一台の車が道路のわきに止まっているのを発見。

助かったと思い駆け寄ると、車の後ろでは老夫婦がかまくらの中で餅を焼きながらお酒を飲んでいた。
こんな所でこんな時間に何で??と思ったが、取りあえず声をかけて事故った事を話した。
優しい二人は大きなかまくらに入れてくれて、暖を取らせてくれた。

二人に何でこんな事しているのか聞いても、上手くはぐらかされてしまい聞けなかったが、おじさんが車を貸してくれると言ってくれた。
でも、ここからだと一番近いスタンドへ行って帰って来るだけでも何時間かかるか分からないし、こんな山の中に置いて行けないと言うと、

「実はすぐ近くに家があるから、私達は大丈夫よ。
わざわざ車を出したのは、この七輪やスコップを運ぶためだから。
それに、そんなに長い時間のドライブにつき合ったら腰が痛くなるわ」

「わしの車のダッシュボードの中に免許証があるから、そこの住所に車を帰してくれればいいよ」

と言われ、二人ともそこに残ると言った。

申し訳ないと思ったがありがたい話なので、俺は身元が分かる大学の学生書を渡して車を借りた。
車を走らせて一時間もしない内に、俺はまた事故りそうになってしまった…

鹿が飛び出して来た。

急ブレーキを踏んだから、後ろで物がバタバタと落ちる音がした。
車を降りて傷とか無いか確認し、ついでに落とした物を拾っていると、おじさんのジャケットが出て来たのでそれも借り、俺はまた車を走らせた。

おじさんのジャケットなのに、無意識に自分のタバコを探していると、茶色い封筒が出てきて、俺はまた事故りそうになる。

遺書と書いてあったんだよ。

車を止めて中を確認した。
もしかしたら何かの間違いかもしれないと思ったんだが、中には保険金で息子夫婦を助けたいと書いてあり、最後には老夫婦の名前らしきサインがあった。
俺はダッシュボードの中のおじさんの免許証で名前を確認したが、どうやら本物の遺書のようだ。

それに、家が近いなんて言っていたが、全くの嘘で県外の人だったのだ。
慌てて引き返した。

色んな事を考えたけど、何も良い案も言葉も見つからなかったが、とにかくまた事故るんじゃないかと思う程急いだ。
現場に戻ると、かまくらは只の丸い雪の固まりになっていて、靴が揃えて置いてあった。

内側から雪で入り口を閉じたんだろうが、とにかくかまくらを掘り崩した。
眠っていた夫婦を叩き起こし、ポカーンとしている夫婦の前で、

「えっと…あの……」

と、どもっている俺を見て状況を察したのか、
おじさんは

「道…分からなかったんだね」

とだけ言い、夫婦は俺をスタンドまで送ってくれた。
その間、誰も何もしゃべらなかった。

スタンドに着いて車を下り、

「わざわざ有り難うございます、いろいろすみませんでした」

と謝ってしまった俺に、

「いや、こちらこそすまなかったね…
また…今度にするよ」

と言って去っていった。

やっぱり何も言葉が出てこなかった。

っと言う話だったんだが、説明下手でスマソ。

一酸化炭素中毒での自殺なんだが、分かってもらえたかな…

友達は、新聞の死亡欄は見れないって言っていた。

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