電車通学だった高校時代のこと。
ある日電車が到着して乗り込むときに、一緒に登校していた友人がホームとの隙間に足を滑らせた。
と言ってもそれ程の間隔はないから太腿で止まったし、車掌が気付いたからそのまま発車することもなく友人と周囲の人達で彼女を引き上げた。
そのとき私は足の状態を見るのに跪いてホームとの隙間を覗きこんだ。
腿や膝から垂れて血まみれになった彼女の足首に何かが巻き付いていた。
なんだか判らなくて目をこらして良く見ると、人形のように不自然に小さいけれど大人の手が足首をつかんでいるのだとわかった。
え、と固まって見つめていると、その手はするっと離れて消えた。
彼女は「足が滑った」としか言っていなかったので、多分あれに気付いたのは私だけだと思う。
慌てていたのでそのときは追求しなかったけど、彼女を救急車で送り出してから改めて思い出してぞっとした。
零感だし手の造形がリアルだったから、幽霊とかじゃなくてなんというか…不思議な生き物?的なものだと思ったのだけど。
東北の田舎の寂れた駅での話。