この話は、僕の担任だった歴史の先生の友人のお話です。
その方とは面識は無いものの、怖い話でした。
もちろん実話です。
これを体験した友人の方を、仮にAさんとします。
Aさんは京都の女子大に通う、女子大生です。
ダンス部に所属していて、夏のダンスのコンクールに向け、ダンスチームのメンバーである数人の友人と、朝から晩まで猛練習していました。
明るいうちは大学の体育館で練習するのですが、夜は公園で練習します。
夜の練習が終わって帰る時間は、いつも深夜の1時過ぎでした。
Aさんはバイクで帰るのですが、公園から家への一番近い帰り道は細くて、暗い抜け道のような道路なのです。
時間も時間だし、遠回りして通行量の多い道を選んで帰っていました。
でも深夜なので、多いといってもそれほどですが・・・
(片側2車線の道路です)
その広い道路のとある信号に、よく引っかかります。
そこの交差点の横には、ファミリーマートがあります。
よく、引っかかりやすい信号とかってありますよね?
そんな感じです。
別に気にもしていませんでした。
そしてある日。
夜の練習が終わって、いつものように遠回りになる広い道路を通って帰りました。
その日もやっぱり、ファミマ横の信号に引っかかりました。
今日も帰りは夜中です。
その時、私の横に車が来ました。
並んで信号待ちをする形に。
すると、横の車の窓がスルスルと下がって、中からおじさんが顔を覗かせました。
夜ということもあり、Aさんは少し身構えます。
「あ、すいません。道をお尋ねしたいのですが」
話し方や、おじさんの態度から、悪い人でもなけりゃ、ヤクザの様でもありませんでした。
「すみませんが、○○病院はどこでしょうか」
○○病院は、その信号から500メートルぐらいのところにありました。
ですが、こんな時間に道を案内して、犯罪に巻き込まれたくはないものです。
車の中に重症患者のような人影もありません。
ちょっと怪しいかも・・・
Aさんはとっさにそう判断して、
「ごめんなさい。分からないです」
と嘘をつきました。
「あ・・・そうですか。ありがとうございました」
スルスルと窓が上がり、信号が青になり、車は発進して行きました。
Aさんも歩きだして家に帰ります。
その日は、ただそれだけでした。
また次の日。
公園で夜中まで練習です。
帰りはもちろん遠回りで、広い道路を使います。
そしてまた今日も、ファミマ横の信号に引っかかり、信号待ち。
『早く青にならんかなあ・・・ほんま相性わるいわあ・・・』
そんな事を考えていると、またAさんの横に車が。
すると、昨日と同じ車なんです。
また窓が開き、おじさんが・・・
「すみませんが、○○病院はどこでしょうか」
え?!
「ごめんなさい!!」
と叫んで逃げたそうです。
そんな事がまた次の日も、その次の日も続きました。
たまりかねたので、次からは暗くて細い道を通るようにしました。
見通しも利かないし、怖いけれど、変なおじさんに会うよりはマシです。
そして、おじさんのことなど忘れていた頃・・・
またあの広い道路を使いました。
やはり、ファミマ横の信号で止まります。
そして、またあの車が・・・
Aさんは怖くなって、信号を無視して逃げました。
その次の日。
この謎の車とおじさんのことを、ダンスチームの友人達に相談しました。
みんなワーキャー言って怖がるのですが、一人だけ凄く顔色の悪くなった友人がいました。
本当に真っ青だったらしいです。
「たしかに怖いと思うけどさ、そんなに真っ青になるほど怖いか?w」
と、他の友人が茶化して言うのですが、尋常ではないほど怖がっていました。
そういえば、その真っ青になった友人は、あのファミマの裏のマンションに住んでいたはずです。
なにか知っているのでは・・・
そして訊いてみると、その友人はこう言いました。
「ファミマの横に信号機なんか無いよ・・・」