憎悪、怨念、殺意は、人を「魔物」へと為らしめる───
事の発端は、大人達から「絶対に近づくな」と言われる神社での肝試しだった。
投稿主がこれに参加しなければ、違う未来が待っていたかもしれない───
この話は十数年にも渡り自分と現妻や実兄、町をも巻き込み、恐怖のどん底に引きずり込んだ実話です。
かなり長い上に自分が書き込みに慣れてない為読みにくい部分もあると思いますがご容赦下さい。
全ての始まりは小学3年生の時でした。兄と兄の友達3人に誘われて、この町で大人たちから
「絶対に近づくな」
ときつく言われていた場所に内緒で行く事になりました。
その場所とは今は誰もいない寂れた神社で、子供ながらにかなり不気味で嫌な感じがしました。
本当は乗り気ではなかったのですが、兄たちに半ば強引に誘われる形で行く事になり仕方なく行くといった感じでした。
決行当日の昼に自分と兄は少し様子見に現地に行きました。
すると、最近この町に町の役所だか町長だかから仕事を頼まれてやって来たらしい20代半ばくらいの男性がその場所にいて、
「君達、ここには何があっても絶対に来ては駄目だよ。近づかない方がいい、早く戻るんだ。いいね?」
と言われ追い返されてしまいました。
しかし兄達はその夜に計画を実行してしまいました。
まずその神社は町の高台にあり、さらにそこから伸びる坂を上がった所にあります。
その坂には鳥居が幾つも連なっておりかなり不気味でした。
最初は皆固まって歩いていたのですが誰かが「別行動しよう」と言い出して兄と自分、兄の友達3人に別れて行動する事になりました。
そしてしばらく歩いていると急に周りの空気というか空間自体というか・・・とにかく何かが変わりました。
自分は兄に「帰りたい」と言おうとしたら、
「帰るぞ、今すぐに」
と兄がいきなり言い出し、自分の腕を引っ張って引き返しだしました。
後少しで鳥居という所で兄が立ち止まり、正面を見て震えていました。
自分も恐る恐るそこをみると・・・・・。
子供が数人ほど自分らの進路を遮る様に立っていました。
その顔を見ると皆半ば白目を向いて無表情な顔をしていました。
兄は恐怖に耐え兼ね、叫びながら自分を引っ張って走りだしました。
子供たちを突っ切り、もう出られると思った瞬間・・・兄が悲鳴を上げて倒れたんです。
自分が兄の方を見るとなんと先程の子供たちが兄にしがみついていたんです。
自分は何とか逃げて助けを呼ぼうとしましたが体が動きません。
自分の下半身がやたら重い事に気づき、目を向けると・・・なんと白目を向いて歯を剥き出しにした老婆が腰にしがみついていたんです。
自分は恐怖というより死を覚悟しました。
死を覚悟して目をつむると自分にしがみついている老婆が。
「おいで・・おいで・・・こっちにおいで・・」
と頭に直接響くような声で呟いてきました。
自分はそれを聞いた途端に死を覚悟したはずが物凄い恐怖心を感じ、思わず目を開いてしまいました。
すると老婆が自分の身体をはい上がって来ていて顔が目の前に有りました。
自分は力の限り叫びましたが、あんなに大きく叫んでいたのに近所の人は何故気づかないのかと思っていました。
そして兄の友達はどうしたのだろうと思い兄の方を見ると・・・。
兄は子供たちに神社の奥へ引きずられて行ってました。
自分は必死で助けを求めて叫びました。
すると背後から聞いた事ある声が聞こえました。
「もう大丈夫だよ」
その声を聞いた途端に身体が軽くなりました。
振り返ると昼間に会ったあの男性でした。
後ろからは大人たちが大勢やって来ていました。
怒ってる声や心配している声も聞こえました。
「助かった?」と思い、兄を見るとなんとか無事なようでほっとして腰が抜けてしまいました。
男性たちが心配そうに声をかけてくれていると、兄が、まだ奥に何人かいる事を告げると男性の顔色が変わり
「まずい!!早く助け出さないと大変だ!!」
と言って数人の大人たちと走って行きました。
それから兄の友達は神社の中で見つかりました。
変わり果てた姿で・・・。
命は助かったけど精神をやられていたそうで、その人たちはそのまま町から出て病院へ行き入院したそうです。
自分たちは皆にこれ以上無いくらいに叱られました。母親たちは泣いていました。
その後で聞いたのですが、あの神社は元は普通の神社でそれなりの力を持った住職がいたそうです。
しかしなまじ力が強い為、助けを求める霊が次々と集まって来て、最初はきちんと対処していた住職もやがて堪えられなくなりそのまま逃げ出したそうです。
本来、住職が居なくなったり取り壊されてしまう神社は、ちゃんとした儀式などを行い場を清めてから祭ってる神を別の場所に移すという事をしなければならないそうですが。
この神社はそのまま放置された為、祭ってる神がいるのに祭る住職が居ない、そしてまだ助けを求める霊が集まって来ているという事から、神の性質が異常をきたし結果、邪霊の住家となってしまったとの事でした。
男性は町から依頼されて退魔士関係の本山から派遣されて来ていた人物だそうです。
その人が言うにはこの神社は過去に例が無いくらいに酷い状態だそうで、浄化するにはかなりの期間が必要と言っていました。
自分達はお祓いを受けてそのまま帰されました。もう絶対にあの場所には近づかないと決めました。
あんな思いは沢山だと思いました。
が
あの事件はまだ始まったばかりだったんです。
数年後・・・あの時とは比べものにならない恐怖を味わう事になりました。
自分が中学3年になった時に、クラスで何かと目立つ存在のMが、こともあろうにあの神社で肝試しをやると言いはじめたのです。
自分と自分彼女(現妻)のAも誘われましたがそれが引き金となり、また兄や町を巻き込む事件が起きてしまいました。
Mがあの神社に肝試しに行くと言い出したの聞いて、自分は震えが止まりませんでした。
そしてMが
「おい!!T(自分の事です)お前も来るんだろ?Aも誘ってるから当然来るよな?まさか逃げないよな?」
と挑発とも思える言葉で誘ってきました。
自分は当然断りました。
「いや・・悪いけど行かない・・そっちもあそこへは絶対に行かない方がいいよ・・・。
悪い事は言わないから止めた方がいい。」
と止める事もしましたがMは全く聞き入れず、逆に自分を臆病者、知ったかぶりしてカッコつけている、等と罵ってきました。
何度説得してもダメでした。
自分もあの時の事を詳しく言えればよかったのですが、町の大人やあの男性からあの事を人に言ってはならない、と固く禁止されていたので言う事ができません。
禁止された理由を言いますと、人と人の繋がり、関係は普通に考えているほど簡単でなく、もっと深く、複雑な物らしいのです。
例え少ししか会話した事なくても(挨拶程度でも)その人同士はそれで関係を持った事になり繋がってしまうらしいのです(強弱はあるみたいですが)。
例え本人たちの仲が悪くても関係なく繋がってしまうらしいです。
有名な「言霊」もこの事が関係してると言っていました。
だからあの事を他人に話す事は、あの事件に関係した自分は当然として、あの邪霊とも繋がる恐れがあり、自分を通して奴らが事件の事を知った人を呼び寄せる可能性があるという物でした。
だから自分は事件の事は言えませんでした。
言えば関係無い人まで聞いてしまったり、Mが人に話す恐れがあるからです。
自分はなんとか行くのを止め様としましたが取り付く島も無いといった状態で、逆に学年中に
「Tは臆病者」
「彼女だけ行かせて自分は行かない卑怯者」
とか言い回り、自分はイジメとまではいきませんが、少し孤立してしまいました。
なぜMが自分に対してあんな態度を取っていたのか・・・。
その理由はこの事件の本当に最後・・・この時からさらに数年後に解る事になりました。
自分はAだけでもと思い説得しましたが、
「R(Aの親友)も行くし、約束しちゃったから・・今更断り切れないよ・・」
と言って聞いてくれませんでした。
あのMが流した話を聞いて自分に少し不信感を抱いていたみたいでした。
自分はAをほおって行く事はしたくない・・・・でもあそこに二度と行きたくない・・・。
止めようにも真実を話せない。
(Aだけに伝えようにも多分MやRが強引に聞き出す恐れがありましたし)
自分が悩んでいると一つ思い出した事がありました。あの事件の後にあの男性から
「また君たちに危害が及ぶ可能性もあるからこれを持っていなさい。
肌身離さずとは言わないけどなるべく近くに置いて置くんだ。
これを持っていたら余程の事じゃない限り大丈夫だから・・・いいね?」
と数珠に似ているお守りを自分と兄にくれた物があったんです。
自分はそれをAに
「自分はやっぱり行けないからこれを持って行って。
忘れたり無くしたりしない様にね・・・。」
と言って渡しました。
Aも少し悩んだけど了承して受けとってくれました。
自分は2つ持っているので一つ渡しても大丈夫だろうと思いました。
もう一つは兄が持っていた物ですが兄はもう家にいません。
兄が何処に行ったかは後でお話します。
そしてMが「計画した」肝試しの当日の夜がやって来ました。
自分らにとって悪夢の様だった夜が。
肝試し当日の夜、自分は少し後悔していました。
皆を無理にでも止めるべきだったかもしれない・・
Aが行ってるのに自分は怖いからという理由で行かないなんて最低ではないのか?・・と。
自室で悩んでいると下の階から電話が鳴り始めました。
両親が中々電話を取らないので自分が電話に出ると・・、
「あ!!T?Aが・・Aが・・大変なんだよ!!とにかくすぐにきて!!」
電話はRからでした。
「大変って何がおきたの?Aはどんな状態なの?」
「とにかく助けて!!今神社なの!1早く来て!早く!!」
自分は最悪の事態になったと思いました・・。
自分が臆病なせいでAが大変なことになったと激しく後悔しました。
もう恐怖心よりAのことが心配でたまらなくなり、神社に行く決意をしました。
しかし自分一人が行ってもどうも出来ないかもしれない・・・。
自分は少し悩みましたが両親に相談することにしました。
初めからこうすれば良かったのですが。
言えばMとかに大人にいいつけた卑怯者と罵られ皆に・・Aに嫌われる。
そんな自分勝手で自己保身的な考えで言えずにいました・・・。
自分は自己嫌悪な気持ちでいっぱいでした・・・。
本当は兄に相談したかったのですが兄はあの事件の後も霊現象に襲われていました。
どうやらあの事件の影響は兄のほうが深刻だったらしく、退魔士関係の本山(どう表現したらよいのか解からない為、とりあえずこう呼ぶことにします)で浄化されることになり今はいないのです。
兄は出発時に
「俺はあっちに行くからこれはお前が持ってな。一つより二つの方が効果あると思うから」
とお守りを渡してくれました。
両親に言うと二人は物凄く慌てて
「町の人たちを集めてあの人たちに連絡しよう。お前は絶対に家から出るなよ!!」
と言ってでていきました。
しかし自分もAや皆が心配でたまらなかったので一足先に神社へむかいました。
しかしその時気づけばよかったのです。
自宅の電話番号はAから聞いたりクラスメイトだから知ってても不思議じゃありませんが・・。
どうやって神社から電話をかけた?
あの頃はまだ携帯もそこまで普及しておらず、クラスの皆は誰ももっていませんでした。
入り口の鳥居にたどり着いたもののその不気味な雰囲気はそのままで、入るのに躊躇してしまいましたが意を決して入りました。
恐怖に震えながら進んでいるとあの悪霊たちが姿を見せないので不思議に思いました。
神社の境内は静かなものでした。
いや・・静かすぎたんです。何か起こっているなら皆の叫びなり悲鳴なり聞こえてくるはずです。
さらに進むと誰かが座り込んでいるのが見えました。
よく見てみるとAでした・・。自分はすぐに駆け寄って
「A!!大丈夫?何があったの?皆は?」
とAの肩を抱きながらききました。
「あ・・T・・。う・・うう・・」
とAは泣き出してしまいました。
「一体何があったの?怪我とかはない?皆はどこにいったの?」
「わかんないよ・・しばらく歩いていたら皆急に無口になって先に行っちゃって・・追いかけようとしたら転んじゃって・・いくら叫んでも答えてくれなくて・・ そしたらへんな子供が出で来てここまで引っ張られて・・・」
自分はそれを聞いてまずいと思いました・・。
あの時と酷似してる・・とあの電話の事もその時気づきました。
とにかくAを連れてここから出よう・・そう思って振りかえると・・。
子供が2~3人こちらを見つめていました・・。
しまった!!
と思いAを立たせて逃げようとして気づきました。
その子供たちは表情があの時の子供と違うんです。
怒った顔でこっちをみていました。
「あの子たちだよ・・私をここまで引っ張ってきたの・・・」
Aが涙声で言いました。
「帰れ」
「ここから早くでていけ」
その子供たちが自分らにそういいました。
どうして?と自分が子供たちを見ていると・・。
知ってる・・俺はこの子たちを知ってる・・。
そう感じた瞬間・その子たちが誰かわかりました。
あの時巻き込まれた兄の友達でした・・。
「あぁ・・そっか・・そうなんだ・・君たちがAをここまで連れてきてくれたんだね?
今、悪霊から守ってくれてるんだね?」
自分は泣いていました。そしてAに
「あの子たちは大丈夫だから・・今のうちにでよう・・・
大人たちも後でくるからそれから皆をさがそう」
と言って落ち着かせました。Aは素直に頷き歩き始めました・・。
ところがいきなり周りの空気が変わったのです。
Aもそれに気づき足を止めました。
そして周りを見ると・・悪霊たちが自分たちを取り囲む様に立っていました。
「ひっ!!」
「きゃああああ!!」
ほぼ同時に悲鳴を上げその場にへたり込んでしまいました・・。
あの子達が抑えていてくれたのが限界がきてしまったのでしょうか?
自分たちはお互いを抱き合い恐怖に震えるしかありませんでした。
しかし、悪霊はこちらに近づいてこようとはしませんでした・・。
自分はすぐにお守りがあるからだと気づきましたAをみるとちゃんと腕にお守りをしていました。
お守りが二つあるから効果も高いのでしょうか?
それ以上近寄ってこれないみたいでした。
「A・・走るよ・・お守りがあるから何とかなるかもしれない・・いい?止まったり振り返らないように走るよ」
とAに言いました。
Aも頷き手を固く繋ぎました。
自分はその辺の棒切れを掴んで無駄な事とは思いながらもそれを振り回しながら走りました・・。
悪霊たちが追ってきているのを背中越しに感じながらも走りました。
そして鳥居が見えてきて
「鳥居を潜れば大丈夫だから!!もうすぐで逃げられるよ!!」
とAに声をかけながら走り続け、ついに鳥居を抜けました・・・。
逃げ延びた安堵感でいっぱいになり二人してその場に座り込みました。
しかし顔を上げるとなんと悪霊たちがすぐ傍まで来ていました。
かなりの数がいたと思います。
あの時は4~5体くらいだったのに・・。
浄化が少しづつ行われて数は減っているはずなのに・・。
しかもどうして神社からでてこられるんだ?
お守りを持っているのになんでそこまで近寄れるんだ?
さっきまで大丈夫だったのに・・・・。
恐怖に震えながらもそんな考えがうかびあがってきました。
そして悪霊たちが自分らにさらに近寄って来たのです。
「いゃああああ!!
なんで?どうして?私たちが何をしたっていうの?
許して!!許してよぉおお!!
助けてー!お母さん!お母さん!」
Aが泣き叫んでいました。
自分も叫んで助けを飛びましたが誰も気づきません。
それどころか街灯や民家の明かりなどが一切無いことに気づきました。
悪霊が自分らを引きずり始めました・・。
自分はあの時の様に
「あぁ・・俺・・これで死んでしまうんだろうなぁ・・」
と考えていました。
Aは気を失ったのかもう叫んでいませんでした。
自分らが鳥居の中に引きずりこまれ始めた時、
バチ-ーーーン!!
と大きな音がしました。
その音に我に返り周りを見ると悪霊たちの姿は無く街灯や民家の明かりも見えていました。
Aも突然のことに呆然としていました・・。
「え?助かったの?」
と自分らは顔を見合わせました。
すると腕につけていたお守りが二人とも壊れているのに気づきました。
まさかこれが身代わりに?と考えていると向こうから大人たちがやって来ました。
その中には退魔士の人たちやなんと兄もいたのです。
自分は事情や状況を話しました。
きついお叱りも受けましたが皆優しく迎えてくれました。
中に残ってる人たちを連れ戻すために、退魔士と大人たちが行くことになりました。
それとなんと兄も同行するらしいとわかりました。
「俺も無関係じゃないしな、俺をきちんと浄化するにはもう一度入らないといけないらしいし」
と言ってました。
そして自分も同行を希望しました。
当然のように大反対をされましたが自分の責任でもあるし・・
そしてなによりも絶対に自分で確かめないといけないことがあるからでした。
自分も一歩も譲らず頼み込んでいると、絶対に単独で行動しない事、皆から離れないことを条件に了承してくれました。
Aをみると、どうして自分が行こうとしているのか、確かめたいことがなんなのかを解かっているようでした。
自分は恐怖心を振り払いながら皆について再び神社の中に入っていきました。
道中、兄に兄の友達のことを話すと兄は涙を流しながら
「うん・・そうか・・あのな・・あいつら・・ついこの間・・息を引き取ったんだ・・俺のとこにも来たよ・・そっか・・お前を守りに行ってくれたんだな・・ありがとう、ありがとう・・」
兄は泣きながらあの子達にお礼を言ってました。
自分も泣きながらお礼を言いました・・。
そしてしばらく歩いていると兄に変化がでたんです。
いきなり倒れこんで苦しそうに顔をゆがませていました。
よく見ると兄に悪霊が圧し掛かっていました。
すぐに退魔士の人が除霊を施したのですが中々払えませんでした。
数人掛りでやっと払うことが出来ました。
その後・・クラスメイトは神社のご神体(と思われるもの)の前で見つかりました。
中は血の海でした。自分はたまらず嘔吐してしまいました。
すぐに救急車が呼ばれ運ばれていきました・・。
幸い重傷ではあるものの命に別状はないとの事で少し安心をしました。
しかし霊が肉体に直接傷をつける事ができるのかと疑問に思いました。
そして・・神社の裏の大木でMが遺体で見つかりました。
自分は見るなと言われて見ておりませんが、自分が確認したかったのはこれの事だったんだと改めて認識しました。
理由は後ほど語ることにします。
それからもうこのままにしてはおけないと、退魔士の人たちが大掛かりな浄化を行うことになりました。
本来はまだ変質しているとはいえ神がいる状態なので少しづづ行い、神を徐々に元の姿に戻していくのが最善だったらしいのですが、事は急を要する為にやむを得ず行うことになったそうなんです。
数日後・・その浄化の儀式が始まりました。
自分はTVなどで除霊儀式などを見たことありますが、全く規模が違いました。
自分とAも当事者なため参列することになりました。
自分はこの光景を一生忘れることはないと思いました・・。
この事件ですが死者が出たにも関わらず新聞沙汰などにはなりませんでした。
どうやら退魔士関係の人たちや町の人たちが根回ししたようでした。
自分は事実を知ることでの感染を防ぐ為だと思っていましたが別の理由もあったのです。
その理由も先ほどの自分のことと同様にこの数年後に判明することになりました。
今回の事件の真相も・・・。
あの後自分は高校に進学して高校を卒業するとそのまま就職して町をでました。
Aも高校卒業後は大学に進学して自分と同じく町をでました。
自分たちは同棲という形で一緒に暮らしてAの大学卒業後に結婚しました。
それからさらに月日が経って、自分たちに娘が出来て、その子が五歳になった時に実家で法事がある為に帰省する事になったのです。
実家に帰る途中、自分たちはあの神社の前を通りました。
鳥居や神社自体も新しくなり、昔と全く違う様子でした。
あの事件・・・一人の死者がでてしまった事件。
あの時自分がMの死を確認しなければならなかった理由・・・。
それは。
「ねぇT・・あの時さ・・私たちがここで襲われてる時・・・あの悪霊の中に・・・Mがいたよね?
それを見たからあの時確認に行ったんでしょ?」
Aは思い出した様に言いました。
「うん・・・・」
そう答えると二人とも黙ってしまいました。
「ママ・・おトイレ行きたい。」
娘のEがそう言い出し自分たちは実家へ急ぎました。
実家に帰って少しくつろいでいると
「E、お外で遊んでくるー」
と娘が言ってきたので
「車に気をつけてなーあんまり遠くに行くんじゃないぞー」
と声をかけました。
そしたら中々娘が帰って来ないので心配して探しに行こうとしたら、半ベソかきながら帰ってきました。
「どこに行ってたんだ。心配してたんたぞ」
と言うと娘の口から信じ難い言葉が出てきたんです。
「あのね。変なお兄ちゃんがこっちにおいでって言ってきたの。
E行かないって言ったらお手々引っ張られたの・・・。
それでね後ろから違う人に引っ張られてお寺(あの神社の事)に入れられて出れなくなってたの」
自分は驚愕しました。まさか・・・と。
隣にいたAも顔が真っ青になっていました。
「それで?どうなったの?何にも見なかった?体はなんともないの?」
Aが慌てて確認すると
「うん・・・なにも見てないよ・・。
少し待ってたらドアが開いたから帰ってきたの・・・
パパ、ママごめんなさい。」
泣き出したEをAが抱きしめて必死でなだめました。
自分はすぐに兄に連絡をとりました。
兄はあの後にそのまま本山に戻り修行をしたいと申し出たのです。
兄に色々思う所があったらしく、両親や退魔士の方たちの了承を得て本山に行きました。
兄は直ぐに電話にでました。
「おぉ、Tか。久しぶりだなー。俺も明後日くらいに戻る・・・・・・
お前・・・・なんでそんな状況になってるんだ?
なんだそれは!!
お前何があった!!」
兄は何か気づいたみたいで、自分が状況を説明すると
「いますぐ町から逃げろ!!いや・・・手遅れか・・
いいか?いますぐ両親やあの神社の管理人に言ってあの神社に立て篭もるんだ・・。
絶対に出るなよ!!俺らもすぐにいくから」
「は?冗談だろ?なんであの神社に・・・どういう事だよ!!」
自分はサッパリ状況が掴めず困惑していると
「お前らを狙ってる奴な、マジで洒落にならん!!
怨霊とか邪霊とかそんなレベルじゃない・・まさに魔物だよ!!
信じられん・・どうやったらそんな風になれるんだ・・。
いいか。すぐに神社に行くんだ!!」
と言って電話が切れました。
自分は困惑しながらも皆に事情を話し、また大騒ぎになりつつも神社に立て篭もりました。
そしてご神体のある部屋で朝を待つ事にしたのです。
深夜遅くなり・・そろそろ眠気がきた時・・。
「おい!!俺だ!!来てやったぞ!!開けてくれ!!」
と兄の声が正面の入口から聞こえてきました。
しかし自分たちは兄のはずがないと思い
「入りたいならそっちの方から入ればいいだろう」
と言いました。
自分とAはそいつが誰だか解っていました。
「M・・・Mなんだろう?解っているんだよ・・どうしてなんだ?どうして俺たちを・・・」
と言った瞬間に入口が開きそこには当時のままのMがいました。
「あ・・・Eを連れて行こうとしたお兄ちゃん」
Eがいいました。
やっぱり・・・。自分はそう思いました。
そしておそらくはEを後ろから引っ張って神社にいれたのはこの神社に祭られている神様なんだと思いました。
正常に戻った神様はあの事件の被害者である自分たちの娘を守ってくれたのだと感じました。
この神社に入ってご神体のそばにいてそんな気がしていたのです。
「あのお兄ちゃん、どうして体が真っ黒でお目々がないの?」
と娘が言い出したのです。
そしてMを再び見てみると全身がどす黒いオーラのように包ままていました。
目もないのではなく、真っ黒な目だったのです。
そして此処にいるだけで気を失いそうになるくらいの憎悪、怨念、殺意などの波動が溢れ出ていました。
魔物。
兄が言った事を思い出しました。
まさに魔物でした。
どうやったら人間だったものがこんな風になれるのか・・・。
自分は家族を守る指命感と目の前の存在に対する恐怖心で震えていました。
自分たちとMはしばらく睨み合ったままでした。
おそらくMは自分たちに襲い掛かろうにもご神体が邪魔して入る事は出来ないのだろうと思いました。
自分は二人の盾になるように前に出て、AはEをしっかりと抱きしめていました。
そして朝になればMの力も弱まり、駆け付ける退魔士たちに今度こそ浄化される・・・。
Mはそれを解っているかの様に自分たちとご神体を凄い形相で睨みつけていました。
そして何かを口走り、真っ黒な目で自分とA、Eを交互に睨みながら消えていきました・・・。
朝日が昇っていたのです。
自分は終わった・・・と安堵しました。
Aは泣いていました。
Eは・・・・寝ていました。
しばらくして兄たちが駆け付けて来て改めて浄化を行う事になりました。
相手が相手なだけにかなり手こずってたみたいですが、ぶじ浄化が終わったと告げられました。
そして自分たちはご神体の部屋に呼ばれて今回の事、そして前回の事件の発端と真相を語られる事になりました。
まずMですが、あそこまで魔物化してしまうと浄化や浄霊は不可能との事で、消し去るしかなかったと言われました。
魂の消滅。
それは前世から続いてる魂をなかった事にされ、あの世にいく事はおろか、生まれ変わる事も出来ない、本当の死。
これ程恐ろしい事はないと思いました。
そして前回の事件でMは変死だと聞かされてましたが、真相は自殺だったそうです。
クラスメイトの怪我もMの仕業だったと言われました。
あの悪霊たちをあの時操っていたのがMだった事も、始めから自分とAを標的に計画された肝試しだったらしいという事も告げられました。
Mを浄化した時に全て解ったと、兄は言っていました。
Mは自分に些細な事から恨み(この時はまだ小さなものだったらしいです)始めたという事でした。
それからは何かと自分とMを比べて殆ど逆恨みに等しい恨みになっていき・・腹いせに自分の彼女(A)を取ってやろうと思い、言い寄った事があると言う事でした。
これについてはAからも聞かされた事があります。
しかしAは全く振り向かず、次第にMはAに本気になっていったらしいのです。
でもAが全く振り向かない為、段々と憎しみに変わり、やはり恨みの矛先を自分に向けたという事でした。
そんな時にあの神社の事件に自分が関わっている事を知ったMは(おそらく大人たちが話ているのを偶然聞いたのだろうと言っていました)、あの神社へ行き、あの大木に「Tを呪い殺せ」と叫びながら藁人形に釘を打ち込んでいたと言うのです。
神社の悪霊たちはMを取り込もうとしたけど、あまりの怨念の凄まじさに逆に利用される形になってしまったと・・・・。
そしてMは自分自身が悪霊になって俺を取り殺しAを自分の元に引きずり込もうと最悪の決断をしたのだそうです。
他のメンバーはただの生け贄程度にしか考えていなかったそうです。
最初はAも他の人もろとも殺そうと考えましたがお守りや兄の友人に邪魔されて、急遽自分を偽の電話で呼び出す事にしたそうです。
あ、重要な事を言ってませんでした。
肝試しが始まった時はMはすでに死んでいたそうです。
大木に打ち付けてある自分に見立てた藁人形を睨みつけている様に首を吊っていたとの事でした。
(だからあの時自分だけが見ない方がいいと言われたのでしょう)
悪霊を使役して自分たちを取り殺そうとしましたがお守りがあった為に上手くいかず、悪霊を神社の外にでれる様にしたりして手を加えましたが、あの時、自分たちは見えてなかったけど兄の友人たちが必死で自分たちを守っていたと教えられました。
そしてお守りが身代わりになる様に弾けた為、その力で神社に押し戻されたという事なのです。
そして浄化の際には大木に身を隠して浄化されたと見せ掛けて、怨みを募らせながら機会を伺っていた。
そこにEを見つけたMが再び行動を起こしたというのですが。
今度はかつて自分が利用しようとしたご神体に阻まれ、その憎悪に終止符を打たれたという事でした。
自分はなんて言っていいのか解りませんでした。
自覚なかったとはいえ自分が発端になっていた事を知りショックを隠し切れませんでした。
「そっか・・・だからMは消える間際に・・・」
他の二人はよく聞こえてなかったらしいのですが自分にはハッキリと聞こえていました。
「なんで・・どうして・・いつもお前ばかり・・」
自分は泣いていました。巻き込んだ人に対して、Mに対して、申し訳ない気持ちと自分に対しての怒りで泣きました。
「もう終わったんだよ?大丈夫、大丈夫だから」
Aも泣きながらそう言いました。
「パパ、ママ、どこか痛いの?さっきのお兄ちゃんになにかされたの?」
Eが心配そうに見つめていました。
自分は二人を思い切り抱きしめて泣きました。
もうあの悪夢は終わった・・・・。
そう思い自分は罪悪感と安堵感に包まれていました。
あの事件の後、自分たちは亡くなった人たちのお墓を回りました。
兄の友人たちのお墓で深い感謝の気持ちを伝え、毎年お参りにくると約束しました。
Mのお墓にも行きました。
本当は実家にもお線香をあげに行きたかったのですが、引っ越した後で行方が解らないとの事でした。
魂のないお墓・・。
自分はMになんと言えばいいのか解らず・・・線香をあげて手を合わせて祈る事しかてきませんでした。
あのMに襲われて怪我をしたクラスメイトたちも今は皆元気にしているそうです(神社に入ってからの記憶は無いみたいですが)。
近々同窓会でも開こうと通達が来ました。
あ、それから娘のEも今は小学校に上がり元気です。
あの後、どうも神様に触れられたEは特別らしくて退魔士の方たちが
「うちにお向かえ頂く事はできないでしょうか?」
と頼み込んできました。
無論、丁重にお断りしましたが・・・。
Eの霊的防御力は凄まじい物になっているらしく、並の悪霊とかは近づくことすら出来ないと言っていました(喜んでいいのやら・・・)。
Aは苦笑いしていましけど・・・・。
後、他の神社などに行った時に自分たちは守ってくれている存在がいっばいいると告げられました。
皆が守ってくれている・・・。
自分は彼等に感謝の気持ちを一生忘れないと思います。
最後にあの神社ですが今では昔の面影も無く、境内で子供たちが遊んでいたり、たまに祭が開かれる等、大変賑わっています。
でも自分たちはあの事件を忘れません。
亡くなった人の為にもこれから神社に行く人の為にもこの話をなるべく正確に伝え、忘れられない様にする為に自分はこうして投稿を決意しました。