あんま怖くないけど、つーか俺が死ぬほど怖かった話しをひとつ。
今から20年くらい前、俺がまだ小学校低学年の頃。
夏休みになると、家の近所の公園で朝のラジオ体操をやってて、近所の子はみんな早起きして公園に集まって遊んだりしてたんだ。
その日は、何故かいつものメンバーが来なくて、ラジオ体操後俺は一人で木渡り(公園の周りに木が植えられてて、地上に降りないで木から木へ移動する遊び)をして遊んでて、ちょうど公園の角の木へ渡った時、変なうめき声が聞こえてきたんだ。
俺は木の上で息を殺して道路の方を見ると、後方から乞食(そういう風体だった)が歩いてきた。
乞食は酔っ払っていたのか、ブツブツ何か言いながら公園の木を、指をさして数えながらこっちの方へゆっくりとゆっくりと歩いてきた。
俺は何故か「見つかったらやばい」と思い、恐怖で動けなくなってしまい、ただ息を殺して木の上で身を潜めていた。
乞食は時折立ち止まって、奇声のようなものを発し段々と俺のいる木に近づいてきた。
「やばい、どうしよう、気づかれませんように」っと目をつぶって必死に祈った。
その瞬間、乞食の笑い声が聞こえたので、目を開けると、こちらを指さしながら乞食が不気味な笑みを浮かべていた。
前歯が2本位しか無く、ボサボサの髪、浅黒い肌は正にホラーだった。
「うわ、バレた!殺される」俺は例え様の無い恐怖に失禁寸前。
乞食は公園の中に入ってきて、こちらにゆっくり近づいてくる。
あまりの恐怖で声も出ない。
とうとう木の下まで来た乞食はポケットに突っ込んだ手をだし俺の足元へ伸ばしてきた。
「もうダメだ!!」と思った瞬間、乞食が「あげるよ」としゃべった。
「!?」頭の中がパニックに、ふと乞食が伸ばしてきた手を見ると、飴を1つ握っていた。
「い、いらない。あっち行って」と勇気を振り絞ってそう言うと何かブツブツ言いながら乞食はまた道路の方へ歩きだした。
「た、助かった」、恐怖から解放された俺は、急いで木から飛び降り乞食に向かって何故か「お前なんか死んじゃえ!!」と叫んだ。
ちょうど、道路に出たばかりの乞食は、俺の声を聞いて振り返った。
「やべぇ」俺がダッシュで逃げようとした正にその時、十字路を猛スピードで車が曲がってきた。
公園から道路に出たばかりの乞食にドライバーは気づかず、あ、っと思った瞬間、乞食は10メートル位ふっとばされて、俺の2メートル位手前に落下した。
ピクリともしない、いや子供にも一目で死んでるとわかる位の有様だった。
仰向けで手がありえない方向に曲っていた。
その手には俺に渡そうとした飴が握られたままだった。