居間でテレビを見ていると、母親と一緒に出かけている筈の親父の叫び声が玄関から聞こえた。
「おい!タカシ(仮名)!早く来い!」
親父はいきなり何を言い出すんだ全く、また酒でも…
最初は無視しようと思ったが、親父のデカイ声は明らかに近所迷惑だ。
注意してやろうと思い、居間を出て玄関に向かおうとした。
「早く来い!凄いぞ!」
何なんだ、ちょっとは落ち着けよ全く。
そう呟いたが、内心では一体何が起こっているのか興味津々だった。
居間を出た時、便所と風呂場の電気がついているのに気が付いた。
ここで自分は何を思ったか、その電気を消しに向かった。
たぶん几帳面な性格のせいだろう。
おれA型じゃないけどな、そんな事を思いながら風呂場に行くと、玄関から親父の声。
「そんなのは後でいい!早く来い!早く来い!」
うるさいな、いい加減にしろ。
そう叫びそうになった瞬間、ドガシャ!!!という大きな音と振動が家を襲った。
地震かと思った。
しかし親父の事を思い出し急いで玄関に行くと、その原因が分かった。
軽トラックが玄関に突っ込んでいたのだ。
まずい親父が死んだ。
そう直感し、必死で瓦礫の中を探したが、親父はどこにもいなかった。
軽トラックの前で泣きながら親父を呼んでいると、不意に後ろから親父の声がした。
そこには元気な両親の姿。
どうやらたった今帰ってきたらしい。
両親に泣きながら抱き付き、頭に一つの疑問がよぎった。
それじゃあさっきまでオレを呼んでいたのは一体誰だったのだろうか・・・