大学時代最後の夏休みに体験した出来事です。
女友達と二人である離島に旅行に行き、島内を適当に散策していた。
突然、どこから出てきたのか気づかなかったが、目の前に男が現れ、俺達に助けを求めた。
連れが怪我をしている、助けてくれと俺達に訴えた。
男の片腕は変な方に曲がって肩からダラリとしており、痛がる素振りはなかったが、骨が折れているのは明白だった。
俺たちは走る男についていった。
遊歩道を抜け、草むらから雑木林に入った。
その瞬間、数メートル離れてついてきた友達が、
危ない!
と叫んだ。
ふっと足を止め振り返ると、青い顔をしている。
改めて前を見ると、林などなく、目の前は断崖絶壁だった。
もう数歩も進んでいたら落ちていたのではないか。
先導していた男はいつの間にか消えていた。
友達が言うには、前を走る男の姿は見えていた。
しかし、俺の見た林などなく、警告板を無視して崖に向かって走っていく俺たちを見て、怖くなり声をかけたという。
男がいつの間に消えたのか、結局わからなかった。
俺はたしかに林を見ており、その光景や虫の鳴き声なども覚えている。
しかしどういうわけか振り返った先は崖だった。
男は坊主頭に派手な柄のシャツで、どことなく悪そうな雰囲気だった。