中学生の時、夏休みに家族でキャンプに行った。
そこのキャンプ場は駐車場から5分ほど歩いたところにテントが張ってあった。
テントに着くまでには川があり、やや古めの吊り橋を渡って行った。
夕食後やることもなく虫を捕まえたりしながら過ごしていたのだが、アウトドアにあまり興味のなかったオレは車の中にマンガを置いてきた事を思い出し、取りに行くことに決めた。
父親から車のキーを借りて駐車場まで行きテントに戻る途中、その吊り橋を渡っていた。
木でできていて幅は両手を広げてやっと届くぐらいだった。
足元の板はところどころ隙間があって下を流れる川がぼんやり光っているのが見えた。
橋の中程まで来てちょうどクツのヒモがほどけたので結び直そうと思いしゃがんだその時、オレの足のすぐ横にある板の隙間から青白い指がニュっと出しているのが見えた。
その指はまるで橋にすがりつこうとしているかのように板につかまっていた。
オレは全力ダッシュでテントまで戻り、落としてきたマンガのことも忘れて毛布の中で震えながら夜を過ごした。
翌朝吊り橋を渡る時にオレの落としたマンガはまだそこにあったのだが、持ち帰るとろくなことがない予感がしたのでそこに放置したまま帰ってきた。