ユータ君は春に幼稚園を卒園してから早く小学校に通いたいと言っていました。
小学生になってランドセルに黄色い帽子で登校するのをとても楽しみにしていたのです。
入学式も終わり、いよいよ一学期が始まりました。
ユータ君は今日から一人で小学校まで通うのです。
前日から準備をしていたけれど、その日も朝から確認を繰り返すユータ君。
「ぼうしかぶりました。ランドセルもちました。なふだつけました。ぼくいってくる、いってきまーす!」
通学路には交通事故の多い交差点があります。
お母さんはそれだけが心配でした。
「信号ちゃんと見て車に気を付けるのよ。」
「はーい!」
元気に飛び出して行ったユータ君をお母さんは微笑ましく見ていました。
お昼を過ぎてインターフォンが鳴りました。
「誰かしら?」
そう思ってお母さんがインターフォンを取っても何も聞こえません。
「気のせいかしら」
しばらくすると、再びインターフォンが鳴りました。
「ユータが帰ってきたのかしら」
今度は、お母さんは玄関に向かって行きドアを開けました。
すると、黄色い帽子にランドセルのユータ君がしゃがみこんで小さくなって泣いています。
「ユータどうしたの?何泣いてるの?」
「……ぼくお母さんに言われたのに、あんなに気をつけてたのにとちゅうでわすれてきちゃったんだ。」
「何忘れたの?」
ユータ君は立ち上がってお母さんに言いました。
けれど立ち上がったのは黄色い帽子をかぶりランドセルを背負った所々血に染まった上着でした。
ソレは言いました。
「くるまにぶつかってね、とちゅうでぼくからだおいてきちゃったの。」