七体のお稲荷さん

七体のお稲荷さん 俺怖 [洒落怖・怖い話 まとめ]

卒業まであと数日となった時、学年主任をしていた皆藤先生が教えてくれた「この中学校の怖い話」を書きます。

うちの中学はできて十数年の新しい学校。
皆藤先生は教師人生をこの中学校でスタートさせた。
そのまま十数年勤め、学年主任になったんだそうな。
そんな皆藤先生が働き始めた年のお話。

赴任してすぐのこと、皆藤先生は一番若かったので、いつも真っ先に登校し学校の鍵を開けるのが日課だった。
まだ四月も半ばのことだったという。
いつものように真っ先に登校してきた皆藤先生は、池の鯉がすべて死んでいるのに気づいた。

「不良が毒でも入れたんじゃ…」

鯉を購入した会社に調べてもらったが、毒はみつからず病気でもないという。
結局、原因はわからないまま。
新しくできた学校で、新たな生活をスタートさせたというのに、なんだか幸先が悪いな、と思ったそうだ。

それから数日後、やはり朝イチで登校した皆藤先生はなんとも不思議な光景を見る。
校舎の屋上から、外壁を伝って水がコンコンと流れ落ちているのだ。
屋上に上がってみることにした皆藤先生。
屋上に出るドアの鍵を開け、扉を押してみたがビクともしない。
登校してきた生徒たちに体育館で待機するように指示を出し、腕っぷしに自信のある先生ふたりと、もう一度屋上のドアを開けてみた。
三人がかりでやっとドアを押し開けると、ドアから大量の水が流れこんできたそうだ。
水の勢いで三人は階段を転げ落ちるハメになったという。
原因は屋上に設置してある貯水タンクが夜のうちに壊れて水が漏れ、屋上にたまっていたことだという。
ドアを開けたことで、たまっていた水が流れこんできたのだ。
建てられたばかりなのに、こんなトラブルもあるのか…と誰もが思ったらしい。

そのまた数週間後、今度は学校の裏手にある湿地帯に水死体があがった。
発見したのは野球部の生徒。
朝練習中、ボールを捜しにいって見つけたそうだ。
被害者は学校近くの住宅地に住む初老の男性で、駅の近くで酒を飲み近道をしようと学校を通り抜け、その裏の湿地帯で足を踏み外しておぼれてしまったという。

そして夏、学校のプールで女生徒がおぼれて亡くなる事件が起きた。
プール開きをしたときに、お祓いはしてもらったのだが、こんな事もあったので改めて別の人にお祓いをお願いしたらしい。
校長の知り合いの女性霊能者で、ほとんどの先生が、学校が霊能者にお願いするなんて、ちょっとどうなの?と思っていたそうだ。

お祓い当日、やってきた霊能者は学校に着くなり

「この学校が建てられる前に、おそらくお稲荷さんのお社があったはずだ。
それがどこに移されたのか、まずそれを調べなさい」

と真っ青な顔をして言ったらしい。
調べてみると校舎はもともと小高い丘で、その丘を切り崩して湿地帯を埋めグラウンドにしたという。
学校関係者は誰ひとりとして、そこにお社があったことなど知らなかったそうだ。
土地を所有していたのは地元の大地主さんで、その大地主さんは学校の隣の大豪邸に住んでいる。

さっそく校長と数人の先生で、お稲荷さんのことを聞きに言ったそうだ。
地主さんによると確かに小さなお社があったという。
ただ、土地の所有者こそ自分だが、まったく使っていなかったので、誰が建てたのか、誰が管理していたのかは知らない。
しかし、土地を譲る際にお社を移し、丁重に祀ってあげるようお願いしたという。
だが、学校内や学校の近くにはお社ははないのだ。
学校の工事を請け負った建築会社に確認した所、お稲荷さんの移転は、土地の造成を担当した下請け会社にちゃんとお願いしたとのこと。
だが、その下請け会社に聞いてみたら

「移転は元請けがやったと聞いた。なので、そのまま取り壊した」

というではないか。
その旨を霊能者に伝えると

「今回のプールの事故を始め、水にまつわる事件、それは事件までいかずちょっと変わった出来事程度かもしれないが、そんなことが起こっていないか?」

と聞いてくる。
そこで鯉が死んだことや、屋上の貯水タンクが壊れたことなどを思い出したという。
霊能者はさらにこう言い放った。

「そのお稲荷さんには、七体のお稲荷さんが祀ってあった。
それは陶器の小さなもので、今も学校のどこかにあるはずだ。急いで探しなさい。
すぐにお社を作り、見つけたお稲荷さんを祀りなさい。
今、四つ事件が起きている。
このままだと後三つ、今まで以上の惨事が起こりますよ」

皆藤先生たちは半信半疑ながらも、学校の敷地内を探してみたそうだ。
すると「なんでこんな所に!」という所からお稲荷さんが見つかったという。

毎朝、多くの生徒が通る校門の横の地面から、野球部が練習しているグラウンドから、はては職員室の応接セットの下からも出てきたそうだ。
半信半疑だった皆藤先生は背筋が凍る思いだったという。
話を終えた皆藤先生は教室の窓から外の林を指差し、

「そのお稲荷さんはね、今でもほら、あそこのお社に祀られているんだよ。
ただね、どんなに探してもお稲荷さんは六体半しか見つからなかった。
最後の1体は半分に割れていて、残り半分は今も見つかっていないんだ」

と言った。
さらに

「どうしても見つからないので校長先生が霊能者の方に相談に行ったら『それはお稲荷さんの警告でしょう。
もし七体全部見つかると、あなたたちはそのうち今回のことを忘れてしまうでしょう。
でも、半体見つからないとなったら…
このことを決して忘れずにいなさい』と言われたそうだよ」

と神妙な面持ちで話してくれた。

そんな「学校の七不思議」みたいなものが自分の中学にあると、卒業直前に知ってものすごく怖くなったのを覚えている。
ただ、皆藤先生はオレたちの後の生徒にもこの話をしているのか気になった。
もし話してもらったという人がいたら教えてほしい。
中学校があったのは埼玉県の、今は合併でなくなってしまった市です。

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