もう今から10年位前のこと。
19歳の時に車の免許を取ってはじめて手に入れたのが、父親の知り合い方から譲って貰った古いマークⅡ(GX71という型)だった
元々はその知り合いの方の旦那さんが出た当初に購入したもので、息子さんがバンパーをぶつけてしまった以外には新車となんら変わらないコンディション。
走行距離も20年以上前の車とは思えない16000キロ、馬力も十分にあり、初心者には少し大きく重い車だったが気に入って乗っていた。
車を譲ってもらってから半年ほど経った頃、友人とドライブに行こうと言う話になった。
県外には出られないけれど、県内を西から東へノンビリ走ろうと初めての長距離ドライブにわくわくしていた。
出発した日の夜、海沿いの駐車場に車を止めて眠ろうとしているときに、伸ばした足元に何かがあることに気がついた。(靴を脱いで寝ようとしていたので足先に当たった)
それはヒモのようでわっかになっていた。
ヒモ?と思い真っ暗な中友人に「ヒモみたいなのがある」とキャッキャしながらそれを引っ張った
すると車のフロアマットの下から、ひとつお守りのような物がスポっと出てきた。
室内灯をつけて見ると、ところどころ変色して黒くなった元は赤いお守り。
交通安全、と書かれたお守りは、その黒ずんだ色合いのせいで『とても安全とはいえないなぁ』と思うほどの不気味な物だった。
お守りを捨てるというのは罰当たりなので、トランクの中にあったいろいろな物を入れるダンボールの中へ入れておいた。
それから2日ほどかけて県内を周り、無事に自宅へついた頃にはお守りの事をすっかり忘れていた。
更にそれから1ヶ月位してバイトの帰り、夜中の1時ごろ、トランクからゴトン、と低い音が聞こえた。
『あー、段差でなんか跳ねちゃったんだなぁ』程度にしか思っていなかったのだけど、信号待ちで停まっている時にもゴトンと音が聞こえた。
『え?ネコ?』とか『崩れるような荷物は無いはずだけど?』と思いながら、家まで10分ほどしかないし、止まる事も無いかと帰りを急いだ。
自宅に帰り、トランクを開けようかなぁと思って、車の後ろへ周った時に、横にあるバイクが目に入った。
センサーで自動点灯するという電気をつけていたおかげで夜でも車庫はそれほど暗くはなく、だからこそ気づいてしまったのかもしれない
バイクのブレーキにお守りが引っかかっている。
体中から汗がぶわっとにじみ出るような感覚がして、背中がゾクゾクした。
赤黒く汚れた交通安全のお守り、トランクから出した覚えの無いお守りがバイクのブレーキレバーに引っかかっている。
混乱するには十分で家族が出して引っ掛けておいたんだろう
とか
自分が無意識にひっかけたのかな?
とか
色々な可能性はあるけど、その考えはすぐに否定される。
まず、車のキーは自分がメイン、スペア共に常に持っている。
父親は出張で家にはいない。
母親は車の免許すらないので、トランクがどうすれば開くのかすらしらない。
何度考えてもあの日以来取り出した覚えの無いお守りが、ブレーキレバーに引っかかっている理由がわからない。
結局不気味になって部屋に逃げ帰り、翌朝母に聞いてみたけれどキーがどこにあるのかすらしらないと言われた。
1週間ほどして近所の神社に事情を話し持って行くと、神主さんは首をかしげていた
「すごく古いですね、けどこの黒ずみはなんだろう?カビ・・・?にしては広がりがまばらだなぁ」
なんて言ってた。
恐る恐る
「血液じゃ、ないんですかね?」
と聞くと
「いやぁ・・・こんな点々と?鼻血?指を切ったのかな?んー・・・わからないなぁ」
と首を傾げるばかり
車を譲ってくれた知り合いの方に話を聞いても
「旦那はお守りとかそういうのが嫌いで、絶対身に着けたり買ったりしなかった。
ちゃんとお祈りをしていればあんなのは不要だといっていたわ」
と言われた
未だにあのお守りが何なのかはわからないし、トランクからした異音の原因もわからない。
まぁ別段何かあったわけじゃないんだけど、軽いお守り恐怖症にはなったかな・・・