私が中学一年生のときの夏起こったお話を投下。
私立の学校で勉強に追われ、ちょっと疲れていた頃です。
その日私は、駅から家までの、山と田んぼしかない夜道をひとりでとぼとぼ歩いていました。
その道沿いには小さな祠があったのですが、その夜見てしまったのです。
ふわふわと浮き、ちょうど風にあおられるように舞う白い人型のなにかを。
式紙というんでしょうか?
おおまかな人型です。
棒人間のような。
祠の前で淡く発光しながら、なんていうんでしょう…
クラゲのような動きをしていたのです。
なぜか恐怖も違和感もおぼえなかった私は、それに近づき、右手の指先で触れました。
するとぱっと粉?霧?のようになって飛散して、きらきら輝きながら私に覆いかぶさりました。
うわっと思って目を瞑り、開けるとそこにはもう何もいませんでした。
それから数日間、いろいろなことが上手くいきました。
バドミントン大会では活躍し、苦手な国語で良い点を取り、友達がどういうわけか増えました。
くじ引きで貴重なゲーム機が当たったりもしました。
その時私は
「前いた白いのは神様だったんだ。
私に福をくれた!」
と思っていました。
そして来るあの日。
いつもどおり暗い夜道を歩いていると、例の祠がぼぅっと光っているのが木陰から見えました。
神様にお礼を言おうと駆けると、そこにはやはりあの人型がいました…
が、様子がおかしい。
目口がある、そして大きい。
私の身長(当時約150cm)と同じくらいでした。
最初見たときはせいぜい5、6cmだったのに。
それにその表情といったら身の毛もよだちます。
ぽっかりと暗い、黒い大きな目は顔部分の半分以上を占めていました。
口はにやぁぁぁっと、まるで裂けたかのようで、狂った笑みというのが一番正しいかもしれません。
その静かに光るなにかと目があった瞬間、ぞわっと悪寒が走りました。
本能的にやばいと察していました。
が、逃げられません。
金縛りのようになっていました。
そしてそいつは不意に喋りだしました。
いや、声を聴いてはなかったんですが、意思?みたいのが伝わってきたんです。
要約すると、
「幸福を与えたのだから謝礼をよこせ」
的な内容でした。
謝礼?なに?知らない、なにしたらいいの?ってパニックでした。
いつのまにか気を失っていて、目覚めるとお寺のお堂に寝かされていました。
わけのわからないままに和尚さんに事情をきくと、どうやら私は「レッショウ様」に憑かれてしまい、このままでは大きな代償を支払うことになるだろう、とのことでした。
すぐにお祓いは始まり、両親の見守る中身を清めて祠へ向かいました。
そこで事件は起きたのです。
ふだんまったく車の通らない祠前の道路を走っていた車が、私たちのもとへ突っ込んできました。
車を運転していた男は錯乱状態で、精神病と診断されました。
私はその事故で左足を腿下から失いました。
あの時たしかに、遠くなる意識の中聞いたのです。
空からの、アッハハハハハハハハハハ!というレッショウ様の笑い声を。
「レッショウ様」は「裂傷様」
脚の裂けた私に和尚さんは話してくれました。
これで代償は払ったことになったようで、以後アレとかかわったことはありません。