あ、駄目だ

あ、駄目だ 俺怖 [洒落怖・怖い話 まとめ]

一年前くらい被災地から引っ越してきたその彼女は、都内のアパートに住んでた。
その日、親しくなりたかった俺は、彼女の他の友達たちと、アパートにお邪魔することが出来てかなり嬉しかった。
結構いい部屋なのに家賃が安いらしく、曰く物件?と冗談で聞いたら「五人くらい死んでる」と管理人に言われたのを教えてくれた。
ヤバいんじゃ、と言ったが彼女は笑うと「もっと怖い家に住んでたから」と教えてくれた。
その日、布団も人数分あるわけじゃなく、雑魚寝をする事になったが、夜中に変な音に気づいて目が覚めた。
カリカリと天井から聞こえて来る。

古いアパートだし鼠だろ、これが心霊現象だと思われてんのかなと思った。
カリカリいう音は、天井から段々窓の方に移って行って、目で追った俺は後悔した。
外の光で窓の外にいる姿が見えた。
上から覗き込むような逆さまの体勢の女が、窓をカリカリかいてた。
曇りガラスで良かったと思うくらいしっかり見えた。
逆さまに窓に張り付いてる女がスカートかどうか、確かめられなかったが笑ってる口元が見えて本当に気持ち悪い
人間にしては重力の働き具合だとかおかしいし、大きすぎる身体に、慌てて背を向けた。
少しして、カチャと窓の鍵が外れる音がして、泣きたくなるほど怖かった
誰だよ開けた奴、とか考えたけど友達は起き上がった気配なくて、自然に開いた様に聞こえた。

きぬ擦れが聞こえて、近づいて来る。
はぁはぁという息に、こっち来るなとしか願えないでいた。
「あ、駄目だ」
彼女の声がして、その途端に部屋が揺れた。
俺は起き上がって一目瞭然にドアに向かったけど、他の友達も同じく裸足で外に出ていた(後で聞いたら女が見えてた)。
地震かと思ったけど、外は揺れてもいない。
部屋の主の彼女の姿は廊下に無くて、部屋を覗き込むと座ったまま、窓を見ていた。
あの霊が怖かったけど、彼女を置いていくわけに行かないので中に入ったら、彼女は泣いてた。
最初に逃げた時に置いていったからだと思って、必死に謝ったけれど違うって言われた。
結局彼女は俺達を追い出して、その部屋に残った。
三日後には会社も辞めて、被災地に帰った。

その時にいた友達と会ったら、俺が見たのと違う話をしてくれた。
女が窓をカリカリしてる時に、部屋の中にも黒い影がいたらしい。
彼女の足と手をがっちり掴んでるみたいだった。
女の霊が入ってきた途端にその影が女に飛び掛かったと、同時に部屋が揺れた。
あの霊、食べられちゃった気がすると、友達は言っていた。

部屋の主の彼女は、どうやら霊が出るってとこを探して、わざわざ入ったらしい。
彼女について回ってる霊より強い霊を探していたそうだ、引き離したくて。
色々怖い目にあったが、結局無理だったらしく帰る事になったそうだ。

被災地にいたことと何か関係あるのかな。
連れてきてしまったわけではないのか。

★この話の怖さはどうでした?
  • 全然怖くない
  • まぁまぁ怖い
  • 怖い
  • 超絶怖い!
  • 怖くないが面白い