学生のころあるお店で中古車を買った。
10年落ちの白いスカイ○インだった。
さびも無く、中もすごくきれいだった。
ところが買って間も無く、毎晩変な夢を見るようになった。
車に乗ろうとドアを開けて乗り込み、ドアを閉めようとすると床下から出てきた腕に足を掴まれる。
それが異常に強い力で、まるで足首に通う血が堰き止められるようだ。
しかし普段乗っているときにはこれと言った怪異も無く、ごく普通に通学に使っていた。
そんなある日、フロント右側ブレーキ辺りから「キイキイ」と異音が聞こえ出した。
部位が部位だけに気になって仕方ない。
金もなかったので、行きつけのGSで頼み込んで見てもらうことにした。
大きな油圧リフトで持ち上げられた自分の車を横目で見ながら、俺は店内で缶コーヒーを飲んでいた。
そこへ顔なじみである、メカニックのM君が駆け込んできた。
「Nさん、ちょっと一緒に見てもらっていいですか。」
恐る恐る覗き込んだ愛車の下回り。
エンジンの真下をくぐり、車体中央へ。
そこにはミッションから駆動輪へ動力を伝達する図太いプロペラシャフトが通っている。
そしてそのシャフトから伝わった動力を、左右の駆動輪へと分配するためのデファレンシャルが・・・
メカニックのMはそのシャフトとデフとをフレキシブルにつなぐ部位(スパイダー)を指差している。
そこには・・・
グリスにまみれ、ぐすぐすになったなが~い髪の毛がごっそりと巻きついていた。